明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

2007-01-01から1年間の記事一覧

『不死身の保安官』『Talking Silents 1「瀧の白糸」「東京行進曲」』ほか

DVD

ラオール・ウォルシュ『不死身の保安官』 ウォルシュは大好きな監督で、自伝も読んでるけど、この作品は見ていない。パロディ・ウェスタンということらしいが、お得意のジャンルといえるのかどうか。 『青山真治 TRILOGY BOX [初回限定生産]』 『日活名作ロ…

ファイト・ハーラン『ユダヤ人ジュース』

DVD

ファイト・ハーラン Jud Suss: Holocaust Studies Series ファイト・ハーランの『ユダヤ人ジュース』の DVD がアメリカで発売されました。先日のジーバベルクの『ヒトラー』同様、これも説明不要の作品でしょう。第三帝国のドイツで撮られたもっとも悪名高き…

ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク『ヒトラー』

芸人でもないのに M1 の前日は眠れなかった。サンドイッチマンの一発目のネタは前に見たことがあったが、こんなに面白かったっけ、というぐらい神がかり的だったね。 Podcast で配信されている若い映像作家との対談で、中沢新一が、「〈知っている〉というの…

シャルナス・バルタス Trois Jours

少し前の FILM COMMENT 誌を読んでいたら、Shigehiko Hasumi による2006年度ベストテンが載っていた。 Broken Flowers Carmen Crickets Flags of Our Fathers Munich Retribution Still Life The Sun These encounters of Theirs Three Timespus one sho…

猟師と庭師〜パスカル・フェランの『レディ・チャタレー』覚書

『消去』において、トーマス・ベルンハルトは、猟師と庭師を、異なる世界に属する二つの存在として、何度も繰り返し対比して語り、猟師のほうをあからさまにナチズムと結びつけて考えている。さらには、『野獣たちのバラード』というかなり大胆な邦題をつけ…

ピーター・ワトキンスの『パリ・コミューン』

吉兆の謝罪会見、わろた。 Neither Mr. Laurel nor Mr. Hardy had any thoughts of doing wrong --As a matter of fact, they had no thoughts of any kind --ローレル&ハーディのある短編冒頭の字幕 "Mr. Laurel nor Mr. Hardy" のところはほかの名前に変…

新作DVD〜『デイヴィッド・リンチ インスタレーション/インランド・エンパイア+リンチ1』ほか

DVD

今年の流行語大賞は「目に肘を入れろ」だとてっきり思っていたが、惜しくも選に漏れた。あれは亀田家の用語なので、流行語を流行語たらしめる公共性にちと欠けていたようだ。モンゴルからの放蕩息子も笑顔で迎えられたようだし、終わりよければすべてよしと…

ローレル&ハーディのことなど

猫の偏食に悩まされる日々。安もんのエサ食べないねぇ、この猫。 ☆ ☆ ☆ ローレルとハーディをまとめて二、三十本見る。こうやってまとめて見ると、同じギャグを結構使い回しているのがわかる。サラダにドレッシングをかけないことを "undressed" というのだ…

新作公開情報〜『ランジェ公爵夫人』ほか

映画館に行くのがおっくうになってしまった。しかし、「カイエ」で、ジャン=ミシェル・フロドンをはじめとする執筆陣の多くが四つ星をつけていたパスカル・フェランの『レディ・チャタレイ』はやっぱり見ておかないといけないだろう。リヴェットの公開はう…

トーマス・ベルンハルト『消去』など

映画『アイ・アム・レジェンド』の原作は、わたしが大好きな小説の一つで、前にもこのブログで通りすがりにふれたことがあった。そのときは、ウィル・スミス主演のリメイクがつくられていることはまだ知らなかったと思う。そのリメイク作品がそろそろ公開さ…

『裸の拍車』『モア』ほか

DVD

Ford At Fox - The Collection (1933)には、170ページ余りの冊子もつく模様。 さて、来年の話をしようか。 ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『13回の新月のある年に』 世界的な評価を考えると恥ずかしくなるぐらい、日本では異常に評価が低いファスビン…

『宮川淳 絵画とその影』

『宮川淳 絵画とその影』 [大人の本棚] 本日発売。宮川淳、読まれてるのか? わからない。 [「白日の中のこの影。絵画は否定し、消去することはできるだろう。だが、芸術はそのとき、まさしく、いよいよその影をあらわにする。」 近現代美術史からポスト構造…

アイザック・アシモフ『コンプリート・ロボット』

アイザック・アシモフ『コンプリート・ロボット』 周知のごとく、ロボットという言葉が最初に登場するのは、チェコの作家カレル・チャペックの戯曲『RUR――ロッサム万能ロボット会社』においてである。この言葉は、チェコ語の robota(強制労働)、robotik…

海の向こうでジョン・フォードがすごいことになっている

DVD

「ボーン・アイデンティティ」シリーズは、最近では珍しく、知性を感じさせるアクション映画だったが、とうとう終わってしまった。しかし、ひたすら走っているだけの映画だったね。壮大な鬼ごっこを見ているようだった。 さて、アメリカでは、2007年になって…

ウディ・アレン「What's Up, Tiger Lily?」

映画監督谷口千吉が、先月29日に肺炎のため亡くなった。『ハイ・シェラ』や『死の谷』を思わせる作品構造を持ち、日本のボガートこと三船敏郎を世に売り出すきっかけとなった『銀嶺の果て』など、少なからぬ佳作を撮りながら、同期の黒澤明の陰に隠れて目…

新作DVD〜『ロベール・ブレッソン DVD-BOX』『七月のクリスマス』

DVD

アニメが途中で終わってしまったので、『おおきく振りかぶって』を漫画で読みはじめる。ほぼ忠実にアニメ化されているので、すでに知っている物語だったが、結局、最初から最新刊まで一挙に読んでしまった。やっぱり面白い。親子の絆も(『巨人の星』『メジ…

新作公開情報〜『かつて、ノルマンディーで』

前に紹介したニコラ・フィリベールの新作は、もう来年の公開が決まっている模様。ついでにルネ・アリオもまとめて上映してほしいところだが、そこまで気が利くやつがいるのかどうか。 『かつて、ノルマンディーで』 監督:ニコラ・フィリベール 内容:実際の…

サミュエル・ベケット『フィルム』

Samuel Beckett, Film ベケットによる(おそらく唯一の?)映画作品。なにかに追われるようにして足早にアパルトマンの一室に逃げ込む男。演じているのは晩年のバスター・キートンである。『ゴドーを待ちながら』を、最初、キートンとチャップリンでやりたい…

新作公開情報〜『牡牛座 レーニンの肖像』

巨大な墳墓を迷路のようにめぐる地下道を歩いていた女が、穴ぼこに落ちた先でなにかを見て恐怖の表情を浮かべるのをとらえたあとで、キャメラが切り返すと、そこに封じ込められていたらしいライ病患者たちが、彼女にむかってゾンビのように迫ってくる。子供…

新作DVD〜ムルナウ『フォーゲルエート城』ほか

DVD

来週、NHK BS でカール・ドライヤーの映画が3本放送されます。なあに、いつもの代わり映えのしないラインナップですよ。『怒りの日』『奇跡』『ガートルード』の3作です。暇だったら見てください。2時間を超えるものがあるので、録画モードには注意しまし…

古井由吉『野川』

だれも教えてくれなかったので、今日気づいたのだが、いつのまにか古井由吉の『野川』が講談社から文庫で出ていた。しかも、講談社文芸文庫ではなく、講談社文庫からというから、これは奇跡だ(700円ぽっきりで手に入ります)。しかし、1、2年もしない…

「BACCANO!」など

SOFTBANK の新機種が発表。カメラに特化したケータイを期待していた。910sh は国際ローミングに対応していないのが唯一の弱点だったので、あれと同じぐらいのデジカメ性能で、国際ローミング対応の機種を待っていたのだ。たしかに、今回の秋冬モデルにはずば…

『なぜ、植物図鑑か―中平卓馬映像論集』

最近、わけあって、女が書いた文章を集中的に読んでいる。女性作家の書いたものというのではなくて、語り手が女性という設定の文章、できれば手紙(あるいは手紙体の小説)をまとめて読んでいるのである。女のエクリチュールというやつだ。翻訳だとわからな…

国際化するのも難しい

『ペパーミント・キャンディ』のイ・チャンドン監督の新作 Secret Sunshine がフランスで公開される模様。イ・チャンドンが映画を撮るのは、2000年の『ペパーミント・キャンディ』から数えて、これが2本目である。7年で2本というのはかなりの寡作といって…

『モノノ怪』ほか

ほんとに雑文です。 ハーモニー・コリンの新作が公開される。どこかで生きているとは思っていたが、ちゃんと新作を撮っていたらしい。話だけ聞くと、ふつうの映画っぽい題材だが・・・。 『ミスター・ロンリー』 監督:ハーモニー・コリン 出演:ディエゴ・…

新作 DVD 情報〜『ルイス・ブニュエル DVD-BOX4』ほか

DVD

今回は、既出製品のばら売りが中心です。若干先取りしすぎていて、写真も用意できてませんが・・・ ■『壁の中の秘事』 ■オットー・プレミンジャー『歩道の終わる所』自分自身を追い詰めていく刑事ダナ・アンドリュース。出口なしの状況が息詰まるようなサス…

『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』『四時の悪魔』

亀田が負けて少し喜んでいるわたしは平凡な人間だ。でも、エリカ様はかわいいのでまあいいんじゃないかと思っているわたしは、やっぱりつくづく平凡な人間だ。 ☆ ☆ ☆ さて、本題。 今日は、『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』『四時の悪魔』を簡単に紹介す…

で、結局、『国民の創生』は何分なの?

サイレント映画の上映時間を調べるのは意外と難しい。資料によって上映時間がまちまちなのである。トーキー映画の場合も、劇場公開版とその後編集されたディレクターズ・カット版などといったように、いくつかヴァージョンが存在することがあるが、それはど…

P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』

今朝から一度もお日様を見ていない。もう8時になるのにあたりは薄暗く、細かい雨がしとしとと降り続いている。まったく、朝から気が滅入るぜ。 ☆ ☆ ☆ 朝といえば、最近、P・D・ジェイムズの An Unsuitable Job for a Woman(『女には向かない職業』)を読み…

ひさしぶりにスタイルシートをあれこれといじっています。ときたま見苦しいときがあると思いますが、しばらく見て見ぬふりをしていただけるとありがたいです。