明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

2008-01-01から1年間の記事一覧

今年書き残したこと

今年もあと残りわずかになってきたので、そういえば書き忘れていたことをいくつかまとめ書きしておく。 アルゼンチンでラングの『メトロポリス』の全長版が発見このブログで『メトロポリス』について書いたことがある。『メトロポリス』がどういった経緯で現…

ゴーゴン幻想

狼男ものを何本かつづけて見ていて、ふと、テレンス・フィッシャーの『妖女ゴーゴン』が狼男のテーマの変奏であることに気づいた。これに気づいた人はまだいないのではないかと、大発見に胸を躍らせたが、騒いでもあまり共感はえられそうにないので、ここに…

新作DVD〜『シチリア!』『映画作家ストローブ=ユイレ あなたの微笑みはどこに隠れたの?』ほか

DVD

しばらく日本の新作 DVD にはこれというものがなかったのだが、この辺で一挙にまとめて。 ニコラス・ローグ『赤い影』 最近、ひさしぶりに見直してみたら、むかし見たときほどおもしろくなかった。けれど、赤いサンタクロースがふりむく瞬間はやっぱり怖い。…

狼男とロイ・ウィリアム・ニール

ずいぶんブランクがあいたので、なかば義務感からなにか書いておこうと思う。 興味をもっている人はあまりいないかもしれないが、今回のテーマは狼男である(ここ数日、狼男がマイブームなので、少々おつきあいを)。 狼男は、戦前のユニヴァーサルが生み出…

ナンニ・モレッティ『Il Caimano』 ほか

シャブロルの70年代黄金時代の DVD が紀伊国屋から発売される。『クロード・シャブロル コレクション 肉屋』『不貞の女』なども出るようだが、 Amazon ではまだ注文できないようだ。実をいうと、わたしはそれほど喜んでいない。どれも見ているというのもあ…

ホセ・ルイス・ゲリン『シルビアのいる街で』

DVD

蓮實重彦『ゴダール マネ フーコー―思考と感性とをめぐる断片的な考察』 前にこのブログで、ミシェル・フーコーらによるマネ論を集めた『マネの絵画』という本を軽く紹介したことがある。映画とは関係ない本なので、このブログの読者(というものがいるとし…

ジャック・ロジェ DVD-BOX

DVD

バッド・ベティカーDVD-BOX につづく今年二度目の衝撃。 ジャック・ロジェの DVD-BOX が、ついについに出てしまったのだ! ロジェの作品が DVD 化される日がいつかくるとは思っていたが、まさかこんなに早く実現するとは。 しかも、5枚組の豪華な BOX で! …

マルセル・レルビエ『ラルジャン』

DVD

アガサ・クリスティー原作の映画など見たくもないが、パスカル・ボニゼールの新作は、クリスティーの Le grand alibi を映画化したものだ。監督デビューした最初のころは、なかなか見どころがある作品を撮っていたが、早くもこういう映画をつくるようになっ…

バーベット・シュローダーの2本の記録映画

Général Idi Amin Dada: Autoportrait(「イディ・アミン・ダダ将軍:セルフ・ポートレート」1974) 『ラスト・キング・オブ・スコットランド』のホレスト・ウィティカーの演技が記憶に新しい、ウガンダの悪名高き大統領イディ・アミンを描いたドキュメンタ…

『夜の悪魔』など

『ゼロ時間へ』は、最後に殺人が起きるユニークなかたちになっていると聞いていたが、中程で事件が起きてしまうのでアレッと思っていると、最後にもう一ひねりあって、さすがミステリーの女王と感心する。べつに、そんなに独創的なことをやっているわけでも…

吉田広明『B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち』

吉田広明『B級ノワール論――ハリウッド転換期の巨匠たち』 ジョゼフ・H・ルイス、アンソニー・マン、リチャード・フライシャー。三人の巨匠の経歴と作品を精緻に分析し、ハリウッド古典期から現代期への転換点としての「B級ノワール」のいまだ知られざる全貌…

サミュエル・フラー『ホワイト・ドッグ』など。

[10月30日のメモランダム] 1922 - ベニート・ムッソリーニがイタリアの首相に就任。 1938 - オーソン・ウェルズがH・G・ウェルズ原作『宇宙戦争』のラジオ劇を放送。全米中がパニックに。 [生誕]1930 - ネストール・アルメンドロス (-1992) [死亡]1997 -…

ジョセフ・L・マンキーウィッツ『大脱獄』

[10月26日のメモランダム] 1881 - アリゾナ州トゥームストンでOK牧場の決闘がおこなわれる。 <生誕>1912 - ドン・シーゲル (ー1991) <死亡>1440 - ジル・ド・レ (ー1404) OK牧場の決闘に歴史上の日付があったのかと知ると、なんだかドキリとする。…

グラウベル・ローシャの処女作と遺作

[10月23日のメモランダム] ・1944 - 太平洋戦争: レイテ沖海戦はじまる。 ・1956 - ハンガリー動乱。ハンガリーの首都ブタペストでソ連軍の撤退などを求める20万人のデモ隊が治安警察と衝突。 ・1981 - 写真週刊誌「フォーカス」が創刊される。 ・1989 -…

日々の泡〜アガサ・クリスティ『ゼロ時間へ』ほか

アガサ・クリスティ Toward Zero(『ゼロ時間へ』) 少しぐらい飛ばし読みしても何の罪悪感も感じないという意味では、クリスティは英語の速読の練習にはうってつけの作家だ。何となくタイトルに惹かれて読みはじめたのだが、"Toward Zero" の意味は、冒頭の…

『ビクトル・エリセ DVD-BOX』ほか

DVD

『シネマ 1*運動イメージ(叢書・ウニベルシタス 855)』ドゥルーズ『シネマ』の上巻がついに発売。フランスでの出版から日本での翻訳が出るまで、これほどの時間がかかったのはいったいなぜなのか。なんだかきな臭いにおいがするが、それはともかく、上巻と下…

マキノ正博『幽霊曉に死す』

前日、ペドロ・コスタの『コロッサル・ユース』を見に行ったばかりで疲れていたが、「第六回京都映画祭」で上映されるマキノ正博(マキノ雅弘)の『幽霊暁に死す』を見に、祇園会館に向かう。二日連続で映画を見に行くのはずいぶん久しぶりだ。いつ以来だろ…

クロード・ジュトラについての調書

クロード・ジュトラカナダ、ケベック出身の映画監督、俳優、脚本家、編集者、撮影監督、プロデューサー。1930年3月11日、モンレアル(モントリオール)に生まれる。医師を父親にもつが、若くして映画を志す。数編の短編を撮ったのち、1954年、Off…

『戦火の傷跡』『女群西部へ!』ほか

DVD

ひさしぶりにフランスの Amazon をチェック。いろいろ出ているようだが、日本と同じで、勝手に DVD のタイトルを付けているものもあるので、フランス語タイトルを見てもピンと来ないものが多い。とりあえず、勘で気がついたものだけをピックアップしてみた。…

日々の泡〜デ・ラ・メア「失踪」など

『20世紀少年』の原作漫画については、以前にこのブログで書いたはずだと思い、調べてみると、その短い批評を書いたのはちょうど2年前だった。これが映画になったことよりも、このブログをもう2年以上もつづけていたということに、本気で驚く。だらだらや…

夢の映画 映画の夢

夢にまで見ながら、いまだ見ることができない幻の映画ベスト5というのを、むかしリストにしてみたことがある。 ルビィ(キング・ビダー監督) The Naked Dawn(エドガー・G・ウルマー監督) リリス(ロバート・ロッセン監督) 七人の無頼漢(バッド・ベテ…

新作DVD〜『レ・ヴァンピール-吸血ギャング団-』『ルイス・ブニュエル DVD-BOX 6』

DVD

アイヴァン・パッサー『生き残るヤツ』 ミロス・フォアマンの脚本家などをへて監督になり、フォアマンと同じく、国を出てアメリカに渡ったチェコの映画監督、アイヴァン・パッサーの作品。これ、前から見たかった映画なんですけどね。なんか安っぽいパッケー…

バッド・ベティカーDVD-BOX

DVD

巨人が珍しく粘りを見せている。ついこの間まで10ゲーム以上の差をつけられていたはずなのに、気がつくと首位にわずか数ゲーム差。92年のモナコGPでの、トップのセナに迫るマンセルを彷彿とさせる驚異の追い上げである。 ・・・なんて話は本当はどうで…

恐怖の愉しみ

夏も終わりですが、最近見たホラー映画のことなどを(あんまり話題がないんです)。 アントニオ・マルゲリーティ『幽霊屋敷の蛇淫』 (DANZA MACABRA, 64)「邪淫」という言葉がすんなり漢字変換できたので驚いたが、よく見たら「邪淫」ではなく「蛇淫」だった…

W・C・フィールズについての覚書

MacBook を修理に出した翌日、むこうに届いたとの Apple の修理センターからのメールがはいる。その翌日、修理が終わったので発送したというメールがはいり、次の日にはもう、宅配で MacBook は我が家に返ってきていた。なかなかの素早さだ。起動中にがーっ…

トッド・ブラウニング『知られぬ人』

だましだまし使ってきたがそろそろ限界がきたので、明日 MacBook を修理に出すことに。すぐに返ってくると思うけれど、駆け込みでなにか書いておくことにした。 ☆☆☆ シネコンで映画館の数がふえたといっても、見られない映画は全然見られないね。カンヌで上…

Land of Promise - The British Documentary Movement 1930-1950 ほか

DVD

とくに書くこともないので、最近見た DVD をいくつか紹介する。 リチャード・コンプトン Macon County Line (74) ヒッチハイクした娘を乗せてアメリカ南部の田舎町をドライブしていたふたりの青年が、途中で車が故障して、一軒家の近くで野宿する。その家は…

キング・ヴィダー覚書

NHK BS で放映された『テキサス決死隊』を見ていたら、白黒だと思っていたのにカラーではじまったので驚いた。なんのことはない、36年のキング・ヴィダー版ではなく、49年のレスリー・フェントン版だった。基本的には同じ話だが、フェントン版では、ヴィ…

新作DVD〜『和解せず/マホルカ=ムフ』ほか

DVD

こないだ紹介したばかりですが、よく調べてみたらほかにもあったので補足です。というか、内容的にはこっちのほうがメインです。 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『密告』 ロバート・ワイズ『ふたり』 見てません。 ジョン・ヒューストン『ザ・デッド ダブリ…

日々の泡〜ユセフ・シャヒーン亡くなる

ユセフ・シャヒーンが亡くなった。脳出血で倒れたあと数週間昏睡状態だったらしい。 実をいうと、わたしはまだシャヒーンの映画を見て本当にすごいと思ったことがない。もっとも、わたしが見たのは、日本で公開された『放蕩息子の帰還』(76)、『アレキサンド…