明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ストローブ=ユイレのDVD

ストローブ=ユイレのDVDコレクション(といってもこれまでに発売されているのは、『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』『アメリカ』のふたつだけだが)に新しいDVDが加わった。『ストローブ=ユイレ・セレクション3』と題したそのDVDには、『セザンヌ』『ルーブル美術館訪問』『アン・ラシャシャン』『ロートリンゲン!』の4作が収録されている。この四作はフランスつながりといったところだろうか(『アン・ラシャシャン』はデュラスが原作。『ロートリンゲン!』では独仏の領土の境界が問題となる)。

セザンヌ』、『アン・ラシャシャン』の二作はすでに見ているが、『ルーブル美術館訪問』はいままで見る機会がなかったものだ。『ロートリンゲン!』は以前一度だけ見る機会があったのだが、見逃してしまった。同じ日にオリヴェイラの『不安』が上映されていたので、そっちを優先させたのだった。いつ公開されるかわからない作品だったからだ(事実、『不安』はいまだに公開されていない)。『ロートリンゲン!』のほうは、神戸のファッション美術館がストローブ=ユイレのフィルムを全部買ってもっているので、いつでも見られると計算した上でのことだった。しかし、その後、結局金にならないと思ったのか、ファッション美術館がストローブ=ユイレのフィルムを売却してしまった。たいへんな裏切りだ。その後関西ではストローブ=ユイレの作品は一度も上映されていない(『労働者たち、農民たち』はどうなってるの?)。これだから、なんの信念もない奴にはやたらにフィルムなんか買ってほしくないのだ。とはいえ、あそこが持っていたあいだに、ストローブ=ユイレの作品をフィルムで何度か見る機会があったは幸いだった。『ロートリンゲン!』も最初はフィルムで見たいのだが、それを待っていたらいつになることか。

最近、『ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーDVD-BOX1』が出たばかりだ(ニュー・ジャーマン・シネマがはやっているのか? まさか)。ストローブ=ユイレの作品は、一般にはほとんど知られていないが、見る人は見ている。彼ら比べてはるかに有名なのに、ファスビンダーは(とくに日本では)ずっと不幸な受け入れられかたをしているように思える。蓮實重彦が一時期ヴェンダースを擁護するためにファスビンダーヘルツォークを切って捨てたことも、少なからず影響を与えているのかもしれない(蓮實のほめた映画だけを見ているハスミストが事実いるのだ)。まあヘルツォークのことは忘れていいと思うが、ファスビンダーの日本での評価というか地位がいまのままなのは残念だ。このDVDが発売されたことで、ファスビンダー再評価の気運が高まることを願う。

ついでに、だれかこの機会に、そろそろジーバーベルクの『ヒトラー』をDVD化してください。お願いします。