明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ポール・ギャリコ『ジェニィ』

突然まっ白な猫になってしまったピーター少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの街へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ──でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。猫好きな著者ギャリコが、一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して猫好きな読者たちに送る、すてきな大人の童話。


[『猫語の教科書』のギャリコによる猫小説。あまりにも有名な本なので今さらという気がするが、押さえておくべきものは押さえておきたい。人間が猫に変身する物語というのは、意外にありそうでないものだ。ギャリコのこの小説は変身もの猫小説の代表作といってよい。猫に変身してしまった少年ピーターは、ジェニィとともに旅をしながら猫のなんたるかを次々と体で学んでゆく。なによりも大事な規則は、「疑いが起きたら、身づくろいすること」。人にしかられたときとか、なにかの音におびえてギョッとして飛び上がり、知っている誰かにそれを見られたときとか、けんかを一時中断したいときとか、悲しい気持ちになったときとか、ともかく体をなめて毛並みを整えること。猫にとって身づくろいはなによりも大事であることを、ピーターは教えられる。ミルクを舌で飲むときのコツを教わる場面では、猫は舌を上向きではなく下向きに丸めるのだと聞かされてびっくりする。ジェニィが猫について教えることは、ピーターならずとも驚かされることばかりだ。作者はほんとに猫に変身したことがあったに違いないと思わせるほど、猫目線の細かい描写がすばらしいが、その実ここに登場する猫たちは、人間的、あまりにも人間的である。猫好きならだれでも読んでいる小説だが、この本で猫が好きになったという人も意外と多い。]


ホームページの「猫の文学」というコーナーで、猫本の紹介をしてます。