木下恵介はときどき妙に映像主義的な作品を撮る。終始キャメラを斜めに傾けた構図で撮られた『カルメン純情す』とか、白黒フィルムに部分的に着色するかたちで全編が撮られているこの作品がそうだ。いずれも、あまり成功しているとはいえず、いま見ると古くさく見えるだけだが、視覚的スタイルはともかく、この時代劇のかたちを借りた戦争批判映画にはたしかに説得力がある。繰り返される戦を淡々とならべてゆくというかたちは、木下恵介が得意とする年代記ものと同じ作り方だが、この作品ではこの語りのスタイルがテーマと密接に絡み合って、戦争のどうしようもないむなしさを際だたせている。木下作品のなかではもっとも成功したものかもしれない。