明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

木下恵介『笛吹川』


木下恵介はときどき妙に映像主義的な作品を撮る。終始キャメラを斜めに傾けた構図で撮られた『カルメン純情す』とか、白黒フィルムに部分的に着色するかたちで全編が撮られているこの作品がそうだ。いずれも、あまり成功しているとはいえず、いま見ると古くさく見えるだけだが、視覚的スタイルはともかく、この時代劇のかたちを借りた戦争批判映画にはたしかに説得力がある。繰り返される戦を淡々とならべてゆくというかたちは、木下恵介が得意とする年代記ものと同じ作り方だが、この作品ではこの語りのスタイルがテーマと密接に絡み合って、戦争のどうしようもないむなしさを際だたせている。木下作品のなかではもっとも成功したものかもしれない。