明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。






























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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

[映画]ジャン=ミシェル・フロドン『映画と国民国家』


ブラジルが負けてしまい、お気に入りのロナルドのいるポルトガルも敗れてしまった。今大会はロナウジーニョの大会になるといわれていたが、結局、終わってみたらジダンの大会だったということになりそうだ。そういえば、Web 版のカイエ・デュ・シネマにも、ジダンを描いたドキュメンタリー映画ジダン神が愛した男』Zidane, un portrait du 21e siècle (日本ではまもなく公開されるはず)についての批評が載っている(英語で書かれているので、興味がある人は、http://www.cahiersducinema.com/ に行って読んでみてください)。

カイエ・デュ・シネマといえば、最近ジャン=ミシェル・フロドンの『映画と国民国家』という本を読み始めた。なかなか面白い。この本の翻訳が出たときはまだだったと思うが、フロドン氏は今やカイエ・デュ・シネマの編集長という地位にあるフランスの批評家だ。Web 版のカイエにもときどき彼の批評が載っている。たまに目を通しているが、正直いってそんなに面白いと思ったことはなかった。この本も、そんなに期待はしていなかったので、とりあえず買うには買ったが、すぐには読む気にならず、しばらく本棚で眠ったままになっていたものだ。まだ読みかけなので、全体の要約はできないが、映画というのは本来的に民主主義的なものであるという基本テーマから出発して、映画史を読み直した本であると、とりあえずいっておく。映画史の本というわけではないのだが、各国別に映画の歴史を振り返ることから始めて、グローバリゼーションとデジタル・ネットワークの時代における映画への考察で終わるという形は、百科事典の「映画」の欄を高級にしたようなものということができる(などといったら著者に怒られるかもしれないが)。

そんなに型破りな本ではないかもしれない。訳者も書いているように、カイエ=バザン主義的な限界も感じさせる。しかし、映画はもちろん映画以外の分野にも及ぶ知識が豊富で、様々なことに目配せが行き届いており、一ページごとに教えられることがある。フランスの批評家が書いたものとしては、かなりわかりやすい部類にはいると思う。映画についてじっくり考えたい人は一読をおすすめする。

原文と比べたわけではないが、翻訳は野崎歓なので、まあ信頼していいだろう。『リバティ・バランスを撃った男』などという誤りもみられるが(正しくは、『リバティ・バランスを射った男』)、こういう間違いは何度確認しても入り込んでしまうものだ(経験者は語る)。それで思い出したが、 どこの TSUTAYA にいっても、おすすめコーナーに『オズの魔法使い』と手書きで書いてあるのだが、あれも正しくは『オズの魔法使』である。いい加減気づいてほしい。