明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ラテンアメリカの文学、出るの?(予想)

最近古本屋でラテンアメリカの文学をよく見かけるような気がする。なにか動きがあるのだろうか。古本屋には最低週一回は顔を出しているので、なんとなく雰囲気でわかることがあるのだ。ヘンリー・ミラー全集をやたら見かけるなと思っていたら、しばらくして新しいコレクションが刊行され始めたりとか。ついこないだも、ブレヒトの映画論集が出ていたのでよっぽど買おうかと思ったのだが、微妙に高い値段だったのでどうしようかと考えていたら、どうやらこの映画論集を含む著作集がまもなく刊行されるらしいという情報をつかんだ。危ないところだった。

そういえば、アンドレ・バザンの『映画とは何か』が同じ時期に二つの古本屋に売りに出されたことがあった。これもやっと再版が出るのかと期待したのだが、いまだにその気配がないということはわたしの勘違いだったのか。ヌーヴェル・ヴァーグの父とも呼ばれる批評家アンドレ・バザンによる非常に有名な批評集なのだが、この本は本国フランスでも数十年前からダイジェスト版でしか手に入らない状態が続いている。特にややこしい権利問題があるとも思えないし、「カイエ・デュ・シネマ」も何をやってるんだか。まあ、わたしは旧版を持っているからいいのだが、これぐらいの本はいつでも手にはいるようにしておいてほしいものだ。

それはともかく、集英社文庫あたりから、ラテンアメリカの小説をまとめて出してもらえるとありがたい(講談社文芸文庫とかちくま文庫では、単行本並みの値段に成りかねない)。ホセ・ドノソの『夜のみだらな鳥』など、もう一度読み返してみたいし、アストゥリアスの『大統領閣下』など、読みのがしている作品も多い。わたしは高校生のときにヌーヴォー・ロマンの主要作品を読んでいたので、たいていの小説には驚かなくなっていたが、それでもドノソの『夜のみだらな鳥』を読んだときはぶっとんだものだ。

ヌーヴォ・ロマンといえば、幸運なことに、なぜか今クロード・シモンの小説何冊か(『三枚つづきの絵』『フランドルへの道』など)が書店で簡単に手にはいる(売れているのか売れていないのかわからないが)。欲をいえば、クロード・シモン平岡篤頼以外の訳で読みたいものだ。この人の訳には、何というか色気がないのだ。かといって、フランス語で読むのはかなりしんどそうだし。堀江敏幸あたりが新訳を出してくれるとありがたいのだが。

まあ、このへんの文学がもっとふつうに読める状態になっていれば、平野啓一郎などといったとんちんかんは出てこないと思うんだが。