明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

グェン・ホン・セン『無人の野』


グェン・ホン・セン『無人の野』(1980)★★

ネオレアリスモふうヴェトナム映画。ヴェトナム戦争をベトコンの側から描いているというだけで評価されているが、正直いって、かなり素朴というか、稚拙な作品である。しかし、土地の大部分が水に浸かっている湿地帯の村(映画はほぼここだけで展開する)をとらえたモノクロの映像にはそれなりに魅力がある。不気味な存在感を感じさせるヘリコプターの使い方も悪くない。予算の関係か、米軍役を演じているのはすべてヴェトナム人らしく、しゃべっている言葉も英語には聞こえなかった(だから、最初は、だれとだれが戦っているのかわからない)。ときおりその米軍側の動向を伝えるシーンが挿入されるのだが、敵側のシーンはすべてカットして完全にベトコン側だけから描いた方がもっとシャープな仕上がりになっていたかもしれない。

ちなみに、『ディア・ハンター』が作られたのは1978年。『ランボー』は1982年。ついでに書くと、スタローン主演というだけでばかにして「ランボー」シリーズは見ずにすませている人も多いかもしれないが、テッド・コッチェフが撮ったこの一作目の『ランボー』だけはそう悪くない作品になっている。だまされたと思って一度見てみるとよい。