グェン・ホン・セン『無人の野』(1980)★★
ネオレアリスモふうヴェトナム映画。ヴェトナム戦争をベトコンの側から描いているというだけで評価されているが、正直いって、かなり素朴というか、稚拙な作品である。しかし、土地の大部分が水に浸かっている湿地帯の村(映画はほぼここだけで展開する)をとらえたモノクロの映像にはそれなりに魅力がある。不気味な存在感を感じさせるヘリコプターの使い方も悪くない。予算の関係か、米軍役を演じているのはすべてヴェトナム人らしく、しゃべっている言葉も英語には聞こえなかった(だから、最初は、だれとだれが戦っているのかわからない)。ときおりその米軍側の動向を伝えるシーンが挿入されるのだが、敵側のシーンはすべてカットして完全にベトコン側だけから描いた方がもっとシャープな仕上がりになっていたかもしれない。
ちなみに、『ディア・ハンター』が作られたのは1978年。『ランボー』は1982年。ついでに書くと、スタローン主演というだけでばかにして「ランボー」シリーズは見ずにすませている人も多いかもしれないが、テッド・コッチェフが撮ったこの一作目の『ランボー』だけはそう悪くない作品になっている。だまされたと思って一度見てみるとよい。