以前、『ヌーヴェル・ヴァーグ セレクション』としてセット販売されていた『パリところどころ』と『アデュー・フィリピーヌ』がハイヴィジョン・デジタルマスター版でばら売りになります。
『パリところどころ』では、女がアパルトマンの一室からエレベータで階下におり、建物の外に出、橋の上で言い寄ってきた男が欄干をこえて身を投げるまでをワンショットの長回し(正確には2ショットだが)で描ききったルーシュの「北駅」が必見。ついでにジャン=ダニエル・ポレの『地中海』もDVDでいいから出してほしい。ちなみに、この作品には、シャンタル・アッカーマン、フィリップ・ガレルなど、ヌーヴェル・ヴァーグ以後の6作家によって撮られた『Paris vu par... vingt ans après』(「パリところどころ20年後」)という続編(と呼んでいいのかわからないが)があります。ふたつ合わせて発売するぐらいの心意気がほしいですね。
一方、ジャック・ロジェの『アデュー・フィリピーヌ』は、トリュフォーが「美しくも呪われた映画」といって絶賛した、あまりにもヌーヴェル・ヴァーグ的な新鮮きわまる作品。アルジェリア戦争を背景にしながら、さわやかな風が吹き抜けるかのような開放感あふれる地中海的傑作だ。『Meine-Océan』もそろそろだれか公開してくれませんかねぇ。
『パリところどころ』10/21
PARIS VU PAR… ハイヴィジョンテレシネ デジタルマスター版
1965年 フランス
第一話「サン=ドニ街」 監督:ジャン=ダニエル・ポレ
第二話「北駅」 監督:ジャン・ルーシュ
第三話「サン=ジェルマン=デ=プレ」 監督:ジャン・ドゥーシェ
第四話「エトワール広場」 監督:エリック・ロメール
第五話「モンパルナスとルヴァロワ」 監督:ジャン=リュック・ゴダール、撮影:アルバート・メイスルズ 出演:ジョアナ・シムカス
第六話「ラ・ミュエット」 監督:クロード・シャブロル 出演:ステファーヌ・オドラン
cLES FILMS DU LOSANGE 1965
COLOR 95分 フランス語モノラル 日本語字幕 16:9LB 1:1.66ビスタ 片面1層
特典 収録:オリジナル予告篇 封入:解説リーフレット
ADIEU PHILIPPINE 1961年/フランス
B&W 110min. フランス語モノラル 日本語字幕 16:9LB 1:1.66ビスタ ドルビーデジタル Jacques Rozier 片面1層 ハイヴィジョンテレシネ デジタルマスター版
収録:フランソワ・トリュフォー&主演俳優出演のオリジナル予告篇 封入:解説リーフレット
ヌーヴェル・ヴァーグの到達点を示す幻の傑作
かけがえのない瞬間の歓喜を
なまなましく捉えた永遠の青春映画ヌーヴェル・ヴァーグの代表作とも言うべき青春映画『アデュー・フィリピーヌ』は、フランス初公開から40年を経た今日にいたるまで、日本では劇場公開もテレビ放映もされていない。本DVDのリリースは、事件とさえ言えるだろう。
監督はジャック・ロジエ。『アデュー・フィリピーヌ』は、彼の長編処女作であると同時に、畢生の代表作だ。1926年生まれのロジエは、1955年に、ヌーヴェル・ヴァーグを先取りする短編『新学年』を監督、1958年の短編『ブルー・ジーンズ』がゴダールに注目され、彼に製作者を紹介され、本作により長編デビューした。
本作は、主役の三人の若者に素人を起用、商業映画としては実験的な撮影方法のため製作は難航、公開までに紆余曲折があった。興行成績は振るわなかったものの、トリュフォーを含む一部の批評家に絶賛され、ヌーヴェル・ヴァーグ屈指の傑作としての名声を獲得した。テレビ番組のケーブル移動係の19歳の青年ミシェル・ランベール(ジャン=クロード・エミニ)は、二人のコケティッシュで明るい美少女、リリアーヌ(イヴリーヌ・セリ)とジュリエット(ステファニア・サバティーニ、声の吹き替えはアニー・マルカン)と知り合う。
無邪気な彼女たちは同居している親友同士だが、どちらがミシェルをものにするかを競い合う。彼女たちはミシェルにつきまとうが、兵役を間近に控えたミシェルは、どこかさめている。やがて、仕事を辞めたミシェルはコルシカ島に遊びに行くが、二人の女の子は彼を追ってコルシカ島にやってくる…。
監督・脚本:ジャック・ロジエ 共同脚本:ミシェル・オグロール 撮影:ルネ・マテラン 出演:ジャン=クロード・エミニ、イヴリーヌ・セリ、ステファニア・サバティーニ