明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

『追跡』『無頼の谷』『西部魂』


今朝、目を覚ましたら部屋のなかが煙りだらけだったのでびっくりした。最初は、寝ぼけ眼に部屋が煙って見えるだけだと思ったのだが、どう見ても白い煙が天井に充満している。焦げ臭い匂いもした。タバコはもう何年も吸っていない。とっさに、パソコンのハードディスクが焼けこげているのだと考え、急いでボタンを押してスリープ状態にした。最近買ったばかりの外付けハードディスクをここ何日も昼夜つけっぱなしにしているのが焼け付いてしまったのにちがいない。そんなふうに考えたのだが、それは間違いだったことにすぐ気づいた。煙は電気ストーブのところから上がっていたのだ。

わたしはいつもタイマー付のデジタル時計に電気ストーブと電気あんかをつないで使っている。夜寝るときに時計のタイマー・スイッチを押すと電気ストーブの電源がオフになり、かわりにベッドのなかの電気あんかの電源が入る。そして朝、セットした時間になると、電気あんかの電源が自動的にオフになり、かわりに電気ストーブのほうの電源がオンになるようにしてあるのだ。こうしておけば、朝起きたとき電気あんかの電源を切り忘れることはないわけである。もちろん、寝る前にストーブの電源スイッチは切るようにしていたのだが、昨晩はたまたま先に時計のタイマー・スイッチを押してしまった。これでもストーブの電源は切れるわけだが、朝、タイマーをセットした時間になると同時に、ストーブの電源が入り、自動的にヒーターが作動してしまうのだ。

前にもこういうことはあったのだが、そのときは別になにごとも起こらなかったので油断していた。しかし、今回は最悪なことに、ストーブの真ん前に、よりにもよってビデオの収納ボックスをおいていたのだ。わたしがこれまで長年録りためた貴重なビデオのコレクションが入っている収納ボックスである。あわててストーブの電源を切ったが、気づくのが遅かったので、取っ手のプラスチックの部分がすでに熱で溶けてどろどろになりかけていた。ストーブの熱が直接当たる位置にある三段分の収納ボックスの中身を急いでチェックした。奥の方に入っているビデオもかなり熱くなっていたが、テープが溶けるほどひどい被害を受けていたのは意外と少なかった。しかし、溶けはしないまでも、うっすらと黒い汗をかいてもう少しで溶け始めそうなものもある。外見は大丈夫そうでもなかのテープがいかれてしまっているものもあるかもしれない。ひとつひとつチェックしていくしかないようだ。しかし、いかれているテープをへたにビデオデッキで確認しようものなら、今度はビデオデッキのヘッドを傷めてしまうことにもなりかねない。困ったことになったものだ。

幸い、超レアなビデオはあらかじめ DVD に落としてあったので助かったが、この作業は結構面倒くさいので、大部分のものはテープのままで残してある。そのなかにもまだ貴重なものが結構はいっていた。キン・フーのビデオ数本も熱放射領域にはいっていた部類だ。見たところ大丈夫そうだが、見て確かめてみないとわからない。見るからに絶望的なほど変形していたのは、エリセの『マルメロの陽光』とオリヴェイラの『アブラハム渓谷』だ。これは痛かった。とくに『マルメロの陽光』はかなり変形がひどく、なかのテープ自体はなんとか持ちこたえているようだが、専門家に復元してもらわなければデッキでの再生は不可能っぽい。DVD もいまは入手不可能になっている。BS で再放送してくれるか、できれば TSUTAYA で DVD レンタルしてくれるとありがたいのだが、紀伊国屋はレンタルにはあまり積極的ではないようだ。

とりあえず、熱の影響を受けたテープで大丈夫そうなものを、中身を確認しながら順々に DVD に焼いておこうと考えた。そこで最初に選んだのが、ウォルシュの『追跡』だったのである。最初に SAMUSUNG の安物ビデオデッキで念のために軽くチェックしたあと、東芝のビデオデッキに移し替えてダビングの体制を整えたところで、ふと気になって Amazon でチェックしてみた。すると驚いたことに、『追跡』でヒットするではないか。ロバート・ミッチャム主演と書いてあるし、間違いない。詳細ページにいってみると、ちゃんとラオール・ウォルシュ監督作品と書いてある。日付を調べてみると、なんとまさに今日、12月25日付けで発売と書いてあるではないか。わたしはこの小さな奇跡に一瞬言葉を失ってしまった。日ごろ、DVD の新作はかなり意識してチェックしているのだが、これはまったく見逃していた。よりにもよって、今日こんなことがあった日にリリースされ、かつそのことに今日気づくとは。まあ、他人にはどうでもいいことだろうから、いちいち書かないのだが、こういう小さな奇跡は結構身の回りでおきるものである。



前置きが長くなった。以下に、『追跡』をはじめとする注目の新作 DVD を紹介する。

ラオール・ウォルシュ『追跡』

ウォルシュの映画はどれも傑作で、はずれなしといっていいくらいなのだが、これはとりわけわたしの好きなウォルシュ作品のひとつである。同時にフィルム・ノワールでもあるニューロティックな傑作ウェスタン。数ある『嵐が丘』の映画化作品よりも、ひょっとするとこれがいちばんエミリ・ブロンテの原作の雰囲気をとらえている作品かもしれない。うーん、こういうのいいですね。キング・ヴィダーの『ルビイ』とか。

フリッツ・ラング『無頼の谷』

マレーネ・ディートリッヒ主演の西部劇。何度も見ている映画だが、実はまともなかたちで見たことがない。日本のテレビで見たときは吹き替え版だったし、フランスで見たビデオもフランス語吹き替え版だった。オリジナルの状態で見られるのはうれしい。これも『追跡』と同じで、妙にロマネスクで西部劇らしくないというか。でもいいんです。

フリッツ・ラング『西部魂』

アメリカ時代のラングの初期作品。といっても、一作目の『激怒』でハリウッド・スタイルはほぼ完璧にマスターしていたラングだから、アメリカの魂西部劇もすでに自家薬籠中のものにしている。ミステリー調のところがあるので、あまり詳しくは語らないでおく。主演はもちろんランドルフ・スコット


まだ割り引き購入できます(たぶん今日中まで)。