明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

アニメもうかつに見られない〜小中千昭と大和屋竺


『ラーゼフォン』というテレビ・アニメをたまたま見ていたら、10話目ぐらいまで見たところで、「脚本 小中千昭」とクレジットにあるのに気づいて、驚いた。テレビのアニメの脚本は毎回変わることが多い。このアニメも小中千昭が全回担当しているわけではないが、その後も数回クレジットされているところを見ると、わたしが気づいていなかっただけで最初のほうのエピソードの脚本も彼が何度か書いていたようだ。

結構有名な作品なので、アニメ・ファンならとっくに見ているだろう。逆に、アニメを見ない映画ファンは、説明したところで見ないだろうし、詳しくは書かない。いかにも「エヴァンゲリオン」以後といった匂いのぷんぷんするロボットものSFだとだけいっておく。思わせぶりな作り方をしているが、「エヴァンゲリオン」ほどの晦渋趣味はなく、その分素直に楽しめる作品だろう(だから、いくぶんインパクトに欠けるということもできるのだが)。

一方、小中千昭については、アニメ・ファンはたぶん知らないが、映画ファンならだれでも知っている名前だといっていいだろう。「ほんとにあった怖い話」など、数々のホラーものの脚本を書いてきたベテラン・ライターである。メイクやCGによる画像処理を使わずに、生身の俳優を画面のどこかに立たせるだけで、異様な雰囲気をスクリーンにみなぎらせる演出のことを、黒沢清は「小中・鶴田方式」と命名している(鶴田はもちろん鶴田法男のこと)。黒沢清自身が多大なる影響を受けている手法である。(『黒沢清の恐怖の映画史』を参照)

しかし、小中千昭がこういうアニメのホンも書いていたとは知らなかった。そういえば、小さいころ好きだったアニメに『ガンバの冒険』というのがある。動物たちの冒険を描いた作品で、主人公の動物たちはいかにも子供向けといったかわいらしいキャラクターに描かれているのだが、かれらの宿敵であるノロイ(呪い?)という名のイタチが登場するシーンだけは、場違いなほどの劇画タッチで、凍り付くような恐怖感をもって描かれ、見ていて非情に怖かった。そこだけとると、わたしのなかではいまだにいちばん怖いアニメの一つである。

ずいぶん後になって、その『ガンバの冒険』をたまたまテレビで放送されたときに見直していたら、「シナリオ 大和屋竺」とクレジットに出たのでびっくりしたものだ。いくら小学生だったとはいえ、大和屋竺の名前を見逃していたとはうかつだった。これだから、アニメだといって気が抜けないのだ。


(しばらく更新していなかったので、穴埋めに没ネタを載せてしまいました。次回はもう少しがんばります。)