舞城王太郎の『煙か土か食い物』を読み始める。なんじゃこりゃ! まだ20ページも読んでいないのだが、これがとりあえずの感想だ。良くいえば破天荒、悪くいえばめちゃくちゃな文体。がさつで野蛮そうな語り手=主人公は、ミッキー・スピレインのハードボイルドに登場する探偵を思わせるが、そいつが突然ダンテの『神曲』を引用したりするから、よくわからない。サンディエゴのERで働く主人公が、母親が負傷して重体という突然の知らせを受け、日本に呼び戻されるところから物語は始まる。ふつうは、東京に戻ってくるのだろうが、彼の故郷は福井。そこが作家の生まれ故郷らしいからまあいいのだけれど、福井を舞台にハードボイルドは成立するのか? というかこれはハードボイルド小説なのか。全然わからない。
関係ないが、ジム・トンプスンの『残酷な夜』と『荒涼の町』が文庫になった。ジム・トンプスンは、「このミステリーがすごい」の上位に選ばれたりする割には、ほとんど文庫になっていなかったりする。人気があるんだかないんだか。
『現金に体を張れ』『ゲッタウェイ』などなど、何度も映画化されているのでジム・トンプスンを知らないひとはまさかいないとは思うが、そんな人には入門編として『ジム・トンプスン最強読本』を紹介しておく。この本には映画批評家の中条省平も書いているといったら、少しは興味がわきますか。