明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ロブ=グリエ、10年ぶりの新作


小説のほうでは、数年前に新作『反復』が日本でも翻訳出版され、相変わらずの健在ぶりを見せつけたアラン・ロブ=グリエだが、昨年、映画のほうでも新作『Gradiva(C'est Gradiva qui vous appelle)』を撮り上げていたらしい。IMDb によると、ロブ=グリエが映画を撮るのは、プロデューサーのディミトリ・デ・クレルク Dimitri de Clercq との共同監督作品『Un bruit qui rend fou』 (1995) 以来だ。その前の、『囚われの美女』が 1983年だったから、最近はほぼ10年おきにしか撮っていないことになる。ほとんどビクトル・エリセ並のスローペースだ(ちなみに、ロブ=グリエは、『Un bruit qui rend fou』と『Gradiva』のあいだに、ラウール・ルイスの『クリムト』(99)に俳優として出演している。演じたのはゴンクール!)。

「グラディーヴァ」というタイトルでぴんと来た人も多いだろう。原作はデンマークの詩人イェンセン(イェンゼンとも書く)の小説『グラディーヴァ』フロイトに深い影響を与えたことでも知られる、あまりにも有名な小説だ(むかし、角川文庫からイェンセンの小説とフロイトの論考をあわせたものが出ていたが、いまは絶版になっている。古本屋で探せば見つかるかも)。

ある若い考古学者が、ローマの太古美術館で、若い女性を描いた一体のレリーフに出会い、その夢の女性に次第にとりつかれてゆくという物語だ。いかにもロブ=グリエが好みそうな物語であり、また、ロブ=グリエが映画化すれば非常に興味深い映画になりそうな話である。

しかし、日本では、ロブ=グリエの映画は、ずいぶん大むかしに特別上映のかたちでまとめて上映されたことがあるぐらいで、一般公開された作品は数えるほどしかない。いちばん有名な『去年マリエンバードで』ですら、日本では DVD になっていないのだから困ったものだ。わたしはフランスにいたとき、『嘘をつく男』『快楽の漸進的横滑り』『ヨーロッパ横断急行』などの代表作をビデオでまとめて見ているから、まあいいのだが、そろそろ DVD-BOX で出してもらえると大変ありがたい。・・・と、思うのだが、フランスでさえロブ=グリエはほとんどまったく DVD化されていないようだ。この新作を機会に、だれか動いてくれないものか。