明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

若冲展に行ってきた


土曜日に相国寺若冲を見に行ってきたんだけど、めちゃくちゃ混んでました。見に行く予定の人は、できたら土日は避けてください。平日に見に行くのが吉かと。



わたしが行ったときは、はいるまで長い行列ができていた。「最後尾から入館されるまで、約80分程度を見込んでおります」と係の男性が大声でいっているのを聞いたときは、倒れそうになった(なんとか踏みこたえましたが)。予定では、2時間ほどかけて若冲を観て、そのまま大阪の Planet+1 で5時から上映されるアピチャポン・ウィラセタクンの『トロピカル・マラディ』に駆けつけるつもりだった。予想外の混み具合に、予定を変えて、若冲は後日また見に来ることにしようかとも思ったが、京都まで出てくるのもそこそこ面倒くさいので、そのまま並んで待つことにした。「Rolling Stone」誌が選んだロック史上ベスト500曲のメドレーを iPod で聴き、たまたまもってきていた絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』を読みながら待つこと約30分。ようやくチケット売り場にたどり着く。なんだ、意外と早かったじゃないかと思ったのは大間違いで、チケットを買ったあとも、建物に沿ってうねうねと長い行列はつづき、結局、そこから絵の置かれた展示室にたどり着くまでまた30分以上待たされた。

しかし、それだけ待った甲斐はあった。「動植綵絵」全33幅を左右に配し、正面に「釈迦三尊像」を据えるという展示の仕方は、これを逃せばもう2度とないぐらいの理想的な空間を形づくっていた。ここ数年間でわたしが行った展覧会のなかで、これはベスト3にはいるといってもいいと思う。ただ、残念なのは人が多すぎたこと。
この展覧会はおおきく二つのホールに分けられていて、一つめのホールには最近発見された若冲の初期作品や、水墨画などがずらりと並べられ、二つめのホールのほうに、「動植綵絵」と「釈迦三尊像」が集められている(実は、この二つのホールのあいだでも結構長い列ができていて、待たされた)。一つめのホールのほうでは、一応順路が決まっていて、流れに沿ってみていくことになるのだけれど、「動植綵絵」が置かれている二つめのホールのほうは、入り口のところで人数制限こそしているものの、なかにはいってからは観る順番は各自に任されている。というわけで、2番目のホールのなかは盲目の群衆がうごめくカオス状態に近いといってよく、とくに5時の閉館時間が迫ってくるころには、人数制限も緩くなってどんどん客を押し込みはじめたせいか、「動植綵絵」の周りではほとんど動けないほどのぎゅうぎゅう詰め状態だった。なかには「動け」「動けない」でけんかをはじめるオヤジがいたりして、ひどい状態だった。いちばん前まで行かないと絵の下のほうまで見えないのだが、あつい人の壁ができていて、それを押しのけていく面の皮の厚さがなければ前までたどり着くのは難しかった。だれもいない部屋でひとりで観られたら最高だったのだけれど。いや、それでも最高だった。



若冲を観たあと、Planet+1 でウィーラセタクンの短編作品と、マリオ・バーヴァの風変わりなサスペンス映画『ファイブ・バンボーレ』を観る。なんか『そして誰もいなくなった』とそっくりだなと思っていたら、やっぱりあれを基にして作った映画らしい。マリオ・バーヴァとしてはバロック度の低い、割とふつうのB級映画に収まっている感はあるが、なかなか興味深い作品だった。

この日は、Planet の移転一周年記念のパーティを下のカフェでやっていて、映画を見終わったあとでちょっとのぞきに行った。数年会っていない知人(Planet とはほとんど関係がない)がなぜかそこに来ていた。話の流れで、彼が知り合いだという映画評論家のミルクマン斉藤氏らと4人で沖縄料理店に行き、とりとめのない話をしながら朝まで飲むことになった。ミルクマン斉藤氏とはそこで初めてあったのだが、自分より映画に詳しい人に会うのはひさしぶりだったので、いろいろ勉強になった。わたしが知らない映画がまだまだあることをとりあえず確認した。

ほとんどろくに寝ていない状態で翌日、ウィーラセタクンの『ブリスフリー・ユアーズ』と『トロピカル・マラディ』を観る。コンディションが悪すぎ、とくに『トロピカル・マラディ』のときに何度かうとうとしてしまったが、なんとか最後まで鑑賞。両方とも疲れる映画だったが、『ブリスフリー・ユアーズ』は傑作だと思う。ウィーラセタクンについては、後日、改めて書くことにしたい。