明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

映画新刊本案内〜コリン・マッケイブ『ゴダール伝』



前から出るという話は聞いていた、コリン・マッケイブによるゴダールの伝記『ゴダール伝』が、いよいよ明日出版される(書店には、もう並んでいるのかもしれない)。わたしは基本的に芸術家の伝記のたぐいにはあまり興味がない人間である。トッド・マッカーシーによるホークスの伝記『ハワード・ホークス──ハリウッド伝説に生きる偉大な監督』が出たとき、すごく高い値段にもかかわらずまわりのシネフィルたちはこぞって買って読んでいた。しかし、わたしには他人が書いた伝記にはさして興味がわかなかった。ホークスの作品だけが重要だった(関係ないが、前にこのブログでピエール・リシアンという人物について書いたことを覚えておられるだろうか。トッド・マッカーシーがリシアンについての映画を撮り上げたそうである。今回のカンヌでお披露目されたと聞いている)。

しかし、相手がゴダールとなると話は別だ。どんな些細な情報でも集めておきたい。しかも、著者はゴダールの研究者として知られるコリン・マッケイブだ。ベルナール・エイゼンシッツ『ニコラス・レイ』のような、たんなる伝記ではない質の高い批評的作品になっていることを期待したい。


ずいぶん昔、わたしはゴダールの兄だったか弟だったかに会ったことがある。アンリ・ゴダールという名前の学者で、ルイ=フェルディナン・セリーヌの研究者だった。仏文科の大学院のゼミにやってきた彼を囲む会があったのだ。そのあとの宴会で、鰹のたたきをうまそうに食べていたのを覚えている。アンリはジャン=リュックとは似ても似つかないきまじめそうな男で、兄弟といわれても信じられなかった。もっとも、兄弟仲は最悪だと聞かされていて、ジャン=リュックについての質問は NG であるというお達しを受けていたので、いちばん聞きたいことは聞けなかった。しかし、あのゴダールにもやはり家族がいたのだ。考えてみたら当たり前だが、この体験は、わたしのゴダール観に少なからぬ変化を与えたとはいえる。その後、とくにゴダールの生い立ちについて調べてみようという気にはならなかった。しかし、こういう本が書かれたのなら、やはり読んでみたい。