明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ディーン・クーンツ『雷鳴の館』を読む


ディーン・クーンツ『雷鳴の館』(扶桑社ミステリー文庫)

スーザンはリモコンでテレビをつけた。次々とチャンネルを流していき、はじまったばかりの古い映画を見つけた。スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘップバーン主演の〈アダムの肋骨〉だ。以前にも見たことがあったが、これは何度でも飽きずに見ることができるしゃれた、粋な映画だった。


「Adam's Rib」 は、〈アダムの肋骨〉ではなく、『アダム氏とマダム』です。何度もいうように、映画のタイトルぐらいすぐに確認できるんだから、ちゃんと調べましょう。それにこの〈 〉はなんでしょうか。未公開の意味でしょうか。ちゃんと日本で公開されています。映画史上最強のコンビの一つ、トレイシーとヘップバーンが、破局寸前の夫婦として法廷でやりあう、抱腹絶倒のスクリューボール・コメディの傑作です。

ちなみに、「rib」には「妻、女」の意味があります(これは、イブはアダムの肋骨から作られたという聖書の「創世記」に由来していると思われます)。したがって、「Adam's Rib」は「アダムの妻」という意味にもなります(アダムは、この映画でスペンサー・トレイシーが演じている役名)。


『雷鳴の館』は、クーンツとしてはあまり知られていない作品かもしれません。あの超傑作『戦慄のシャドウファイア』のような狂おしいスピード感には欠けますが、解説の風間賢二も書いておられるように、ドン・シーゲルの『ボディスナッチャー/恐怖の街』を思わせる、どこか陰謀めいた雰囲気がたまらないサスペンス・ホラーです。

クーンツなんて読んだことないという人は、だまされたとおもって、まず『戦慄のシャドウファイア』を読んでみてください。それで面白くなかったら、そうですね……、まあ、残念だとしかいいようがないですね。ほんとに残念です。これが面白くないとなると、いったいなにを読んだら面白いのか……。