ほんとに雑文です。
ハーモニー・コリンの新作が公開される。どこかで生きているとは思っていたが、ちゃんと新作を撮っていたらしい。話だけ聞くと、ふつうの映画っぽい題材だが・・・。
『ミスター・ロンリー』
監督:ハーモニー・コリン 出演:ディエゴ・ルナ/サマンサ・モートン
内容:‘モノマネ’をして生きている彼らは“インパーソネーター”と呼ばれている。マイケル・ジャクソンとして生きる青年が、マリリン・モンローとして生きる女性に恋をした。自分に自信がもてないために他人を演じて生きてきた彼が、生まれて初めて恋をしたことでぶつかる壁…。(正月第2弾〜シネマライズ) 配給:ギャガ・コミュニケーションズ
『女には向かない職業』を読み終わった。サラ・パレツキーなどの女探偵ものの走りとなった作品だが、古典的なハードボイルドを読んだというのが最初の読了感だ。ヒロインの女探偵は、手強そうな用心棒を殴って倒すことができるほど腕っ節は強くないし、肝心なときにピストルを撃つことさえできない。しかし、やっていることはフィリップ・マーロウとさしてかわらず、ときには違法なことさえやってのける(それが最後に彼女を窮地に立たせることになるのだが)。
事件の真相が明らかになり、すべてが終わったあとで語られるエピローグの部分がすごくいい。名前だけは出てくるのだが、決して登場することのなかったダルグリッシュ警視が、最後の最後に現れ、ヒロインとはじめて対峙する。すべてを見透かしているように思えるダルグリッシュを前にすると、初仕事にしてはなかなかの腕前を見せた女探偵も、とても歯が立たない。自殺したパートナー(彼もまたこの物語の影の主人公なのだが)との関係で、ダルグリッシュに対して畏怖と憎悪の入り交じった思いを抱いていた女探偵は、相手の懐の深さに、思わず感情を吐露し、涙する。ここにいたってはじめてヒロインが女の弱い部分を見せるところが泣かせるのだ。
解説を読んではじめて知ったのだが、このダルグリッシュ警視というのはP・D・ジェイムズの小説ではおなじみの人物らしい。それを知っていればもっと面白く読めるところだ。
テレビドラマの新番組がそろそろ出そろう頃だ。夏のテレビドラマは全滅だった。深夜枠の「ライフ」が少し面白かったぐらいか(女の子がいじめられる話が好きなんです)。秋のドラマはもう少しましなものになりそうな予感がしているのだが、どうだろう。
菅野美穂主演の『働きマン』は、原作を知っているので、第1話を見てもデジャ・ヴュ感しかなかった。第四の壁を越えて人物がカメラに向かって直接語りかける演出が少しうざい。一風変わったヒーロー変身ものとして楽しむという手もある。
長澤まさみ主演ということで期待した『ハタチの恋人』は、大物お笑い芸人の演技に引きずられた冗長な演出にがっかりした。もう少し見てみるが、あまり期待できそうにない。
思い半ばで死んでしまった野球選手が、他人の身体を借りて生き返り、夢を果たそうとする『ドリーム☆アゲイン』は、主人公の目的がはっきりしており、したがって、ドラマの目標もはっきりしている。今のところは、これがいちばん安心して見ていられそうだ。志田未来が出ているとドラマが引き締まるね。
ドラマとは対照的に、夏のテレビアニメは全体的に水準が高かった。『DARKER THAN BLACK - 黒の契約者 -』は最後まで緊張の糸が切れず、楽しんで見ることができた。「契約者」「ドール」「ゲート」といった独特の喚起力のある言葉の使い方がうまい。
『ひぐらしのなく頃に』は、ワンパターンの繰り返しに最初なんだこれはと思ったが、延々繰り返される物語の呪縛から逃れることがテーマだとわかってくると、いつの間にかはまってしまう。科学的な説明と超常現象、美少女キャラとホラー、ギャグとシリアスといった、相反するものの混在ぶりにはじめは違和感を覚えるが、その微妙なバランスがこのアニメの独特の雰囲気を作り出しているのはたしかだ。これもそろそろ大団円が近づいているようである。
『おおきく振りかぶって』(まだ放映中)は、いままでありそうでなかった、さわやかな野球漫画で、地味だが注目に値する。なにげに見始めた『電脳コイル』は、古い町並みの日本家屋、木造の駄菓子屋といった懐古趣味的な部分と、偏在する電脳世界が奇妙に溶けあって、独特の雰囲気を作り出している。NHK の子供向けアニメだと侮ってみていると、後半は、『回路』を思わせる電脳ホラーとでもいったものになってゆき、結構怖い。いまだ放映中だが、そろそろ終わりが見えてきている。
わたしはアニメをそこそこ見ている方だと思うのだが、それでも最近のアニメにはついて行けないとときどき思うことがある。脳天気なギャグで絶望が語られる『さよなら絶望先生』や、とりわけ『モノノ怪』といった、マニエリスティックな映像美に貫かれた作品を見ていると、いったいどれだけの視聴者がついてきているのだろうかとつい不安になる。ミステリー仕立ての妖怪譚とでもいったアニメ『モノノ怪』は、小中千昭をはじめとする上質の脚本によるどろどろとした因縁話のおもしろさもさることながら、非常にクオリティーの高い美術に見ていて圧倒される。絢爛豪華な色彩と、貼り絵のような奥行きのない平面的な画面作り。マネキンのような背景の人物たち。一昔前の時代を背景にしたレトロな雰囲気と、主人公の薬売りの男が繰り出すガジェットのモダニズムの対照。あまり味わったことのない感覚に最初はとまどうが、やがてだんだんと虜になる。ここ数年で見たアニメのなかでも、一二を争うできだったといっていい。