明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


このサイトはPC用に最適化されています。スマホでご覧の場合は、記事の末尾から下にメニューが表示されます。


---
神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

---

評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ファイト・ハーラン『ユダヤ人ジュース』


ファイト・ハーラン Jud Suss: Holocaust Studies Series


ファイト・ハーランの『ユダヤ人ジュース』の DVD がアメリカで発売されました。先日のジーバベルクの『ヒトラー』同様、これも説明不要の作品でしょう。第三帝国のドイツで撮られたもっとも悪名高きプロパガンダ映画です。ゴダール「映画史」にも何度か引用されていました。『ヒトラー』と同時期に発売されたので、同じ会社から出ているのかと思ったら別々のようです。偶然だったのでしょうか。

監督のファイト・ハーランはむりやり撮らされたと自己弁護し、戦後の裁判でも軽い刑を受けたようです。しかしどうなんでしょうか。日本で公開された彼のわずか数本の作品なかには、 『支配者』(36) 『偉大なる王者』(40) といったタイトルが並んでいます。いかにもといったかんじでしょう。前に紹介したマルク・フェロの『映画と歴史』でも、この作品に短い一章が割かれ、たった4度だけ使われているオーヴァーラップの使われ方に、ナチのイデオロギーが隠しがたく露呈していると論じています。