明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。





























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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

デルモア・シュワルツ『夢の中で責任がはじまる』


Delmore Schwartz, In Dreams Begin Responsibilities and Other Stories



とりあえず、表題作の "In Dreams Begin Responsibilities" を読む。

自分の父と母が結婚する前(つまりは自分が生まれる前)のある日の光景を、語り手が、夢でも見るように映画館で見ているという摩訶不思議な短編小説。1909年のある日の光景を映しだすそのフィルムは、バイオグラフ社サイレント映画のようだと、語り手によって形容されている。「珠玉の」という言葉はこの小説のためにあるのかもしれない、と思わせる、実にユニークな作品だ。


この小説もローゼンバウムの本で知った。デルモア・シュワルツは日本ではほとんど無名の作家といっていいだろう。翻訳も数えるほどしか出ていない。このユダヤ人作家は、ほとんどこの短編集一つで、というかこの表題作一つで名をなし、そしてはかなく消えていった。翻訳は出ていないと思っていたが、村上春樹柴田元幸ら五人の訳者が自分の好きな短篇を持ち寄ってつくった『and Other Stories とっておきのアメリカ小説12篇』というアンソロジーに入っているらしい(とっくの昔に紹介されていたのかと思うと、なんだか残念だが)。訳しているのは、映画批評も書いている(最近は書いていないのかもしれないが)畑中佳樹。畑中の解説の言葉を引用しておく(ネットで調べて転載)。


 「たった一発の狙いすました弾丸でたった一つの的を射抜き、あとは一切余計なことをせずに死んでいった作家――デルモア・シュウォーツを、ぼくはそんな風に感じている。その一発の弾丸とは、一つの短編小説である。そのタイトルが、まるで伝説のように、アメリカ小説愛好家の間でひそかに囁かれつづけてきた。ぼくは、それを 「夢で責任が始まる」と訳した。余計な解説はいっさい付けたくない。とにかく読んで下さい。是が非でも人に読ませたくなる小説なのだ。一九三七年、デルモア・シュウォーツ二十四歳の時に発表された短編である。」


去年出た坪内祐三『変死するアメリカ作家たち』にはデルモア・シュワルツのことも書かれているようだが、まだ読んでいない。


(年が変わっても、あいかわらずキーワード・リンクしないようなマイナーな事柄ばかりを取り上げてゆく予定です)。