明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


このサイトはPC用に最適化されています。スマホでご覧の場合は、記事の末尾から下にメニューが表示されます。


---
神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

---

評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

M・Cについて


年末から猫の様子が変だったのが、年が明けて二日ほどエサを食べなくなったので、あわてて病院に連れて行く。結局、便秘だったと判明。いまではすっかり元気になったが、かわりに今度はこっちが体調を崩してしまった。しばらくまともな文章を書ける状態ではなかった(まあ、いつもかけているかどうか怪しいが)。

昨日あたりからようやく体調が回復したので、ひさしぶりに書きはじめる。とはいったが、書くことが何も思い浮かばない。仕方ないので、前に書きはじめて没にしたネタでも挙げておくことにする。


☆ ☆ ☆



最近、なぜだかマイケル・ケイン主演の映画を何本か続けて見た。こういうふうに俳優中心に映画を見ていると思わぬ発見もあるので、簡単にメモっておく。


この映画については前に書いたので省略する。植民地戦争を描いたなかなかの力作。マイケル・ケインは、スタンリー・ベイカーと対立する将校の役で登場。



レン・デイトンの「ハリー・パーマー」シリーズの記念すべき第一作の映画化。

あらゆる意味で「007」シリーズのアンチテーゼとしてつくられたこのスパイ映画(製作のハリー・サルツマンはいわずとしれた「007」シリーズのプロデューサー)のなかで、マイケル・ケインが演じるのは、いやいやながら任務を遂行する英国の諜報員だ。ここには、銃弾の飛び出すスーツケースも出てこなければ、派手な爆破シーンもなく、カーチェイスすら用意されていない。パーマーが出会う女も、ボンド・ガールとはほど遠い、少しくたびれた同僚の女スパイにすぎず、スパイ映画にお色気が必要などというのはなにかの間違いだとでも言いたげだ。

洗脳テープ、二重スパイなど、スパイ映画の紋切り型がつまった映画だが、「007」とは正反対の薄暗い画面、重厚な演出、斬新なカメラワーク(天井が映り込むほどの仰角撮影、斜めにかしいだフレーミング)などで妙に印象に残る。

シドニー・フューリーはカナダ生まれの映画監督。アメリカに渡ってからは、はっきりいってたいした映画は撮っていないが、ロンドン時代に撮ったこの作品は全然悪くない(アメリカに行ってからはたいしたことないと書いたが、実をいうと、『エンティティー/霊体』というかなり下世話なホラー映画も、嫌いではない一本だ)。『シェラマドレの決闘』という西部劇もちょっと気になっているのだが、これはビデオで出ているようだ。




アルドリッチの映画における集団というのは、たいていの場合、共通の意思によって結ばれたチームというよりは、利害関係によって一時的に一つに集められた寄せ集めに過ぎない。その典型が『特攻大作戦』であるが、『燃える戦場』においても、イギリス軍とアメリカ人将校よりなる部隊は最初からぎしぎしときしみ、高倉健演ずる日本軍将校の心理作戦によって、もろくも崩れ去ってしまう。


17世紀の三十年戦争末期、プロテスタントカトリックの対立によって荒廃したドイツの谷間の村を舞台に、そこを占拠した傭兵部隊の隊長(マイケル・ケイン)と、流れ者の元教師(オマー・シャリフ)の友情を描いた、地味な歴史映画の佳作。


イギリス生まれの監督マイク・ホッジスのデビュー作。マイク・ホッジスも、もう少しばかり評価されていい監督だろう。

ロンドンの地下組織に属する殺し屋(マイケル・ケイン)が、兄の死を不審に思って、ひとりニューカッスルにむかう。真相を解明しようとかぎまわるうちに様々な圧力がかかるが、ついには兄の殺しに関わったものたちをひとりひとり追い詰めて殺してゆく。とにかく、ロケがいい。木の土台で造られた鉄橋の上での追跡、土砂を海に運んで廃棄するリフトを使ったクライマックスなど、忘れがたい場面が少なくない。フィルム・ノワール的な雰囲気を持つフィルムだが、夜の場面は少なく、多くは曇天の白昼に展開する。ノワールというよりはグレーな犯罪映画だ。

マイケル・ケインはアンチ・ヒーローが実に似合う俳優だが、この映画のマイケルもヒーローとはほど遠い存在だ。マイケルは組織のボスの情婦と密通しているのだが、ニューカッスルにいってからもいろんな女と関係を持つ。しまいには安宿の色ぼけしたおばさんにまで手を出す始末。いまのアメリカ映画なら、こういう好感度を下げるような人物設定はあり得ないだろう。殺し方も残酷で、相手が女であっても容赦しない。ナイフで刺し殺したり、ビルから突き落としたり、麻薬を注射して放置したりと、非常に冷酷なやり方で殺してゆくのだが、銃を使うことはほとんどない。だから、「狙撃者」という邦題は、例によって、的外れな気がする("Get Carter" は訳すとするなら、「カーターの首取ったれや」ぐらいの意味か)。

ロケをうまく使っているが、観光映画とは正反対の意味でだ。だれかが、"The British board of tourism would prefer you didn't watch this film" と書いているのもうなずける。

この作品はたしかスタローン主演でリメイクされているはず。そちらも見ていると思うのだが、まったく思い出せない(スタローンの映画で記憶に残っているもののほうが、逆に珍しいのだが)。




『燃える戦場』をのぞいて、どれもそれほどポピュラーな作品とは言い難い。監督の名前で選んでいると見逃してしまいかねない作品ばかりだが、いずれも捨てがたい佳作である。暇があったら見ておいてほしい。