明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

夢の映画 映画の夢


夢にまで見ながら、いまだ見ることができない幻の映画ベスト5というのを、むかしリストにしてみたことがある。

 

ルビィ(キング・ビダー監督)
The Naked Dawn(エドガー・G・ウルマー監督)
リリスロバート・ロッセン監督)
七人の無頼漢(バッド・ベティカー監督)
逮捕命令アラン・ドワン監督)


こんなラインナップだった。その後、結局、この5本の映画はすべて見てしまった。すべて DVD のおかげである(『The Naked Dawn』だけは、むかし書いていたメルマガの読者のひとりが、わたしがこの映画を見たがっているのを知ってビデオを送ってくれたのだった。いい画質とはとてもいえなかったが、とにかく見ることはできた。これはいまだに DVD になっていない)。


5本とも傑作だったけれど、まだ見ぬその映画を秘かに夢想していたときの方が幸福だったという気がしないでもない。土地よりも土地の名に魅せられたプルーストのように、作品自体よりも、作品のタイトルのほうに、いつの間にか妄想をたくましくしている自分がいる。ルネ・アリオの『老婆らしからぬ老婆』はそんな映画の一本だろうか。


さて、これを見るまで死ねないと思っていた5本が見れてしまったので、もう死んでもいいかとも思ったが、もう少しがんばってみるためにひさしぶりにリストを更新してみた。「これを見るまでは死ねない映画」の現時点でのリストである。むかしならすらすらと出てきたタイトルが、しばらく考え込まないと出てこなかった。DVD でお手軽に映画が見られるようになった時代の皮肉というべきか、なにがなんでも見たいという欲望はやっぱり弱まっているようだ。

ムルナウ4 Devils山中貞雄の諸作品などの、いわゆる "lost film"、および DVD が存在する作品はのぞいてある。


グリード(4時間版)
メーヌ・オセアン
When Strangers Marry
Milstones
殺し屋ネルソン
ウィニフレッド・ワーグナーの告白
乙女の星
南瓜競争
フェルディドゥルケ
物質の演劇
The Tall Target
Filming Othelo
The Phenix City Story
Witchita
La casa del angel
ミス・メンド
契約殺人
森の彼方
悪の塔
今は死ぬときだ


このブログの読者ならみんな知っている作品ばかりだとは思うが、念のために、少しばかりコメントを加えておこう。


When Strangers Marry は、ギミックを使ったホラー映画で知られるウィリアム・キャッスルが初期に手がけたフィルム・ノワールウィリアム・キャッスルといえばちょっとうさんくさい監督だが、格調高い映画雑誌や評論のなかでもなにかと目にする作品なので気になっている。『ウィニフレッド・ワーグナーの告白』は、『ヒトラー』のジーバーベルクが、ナチスを擁護していたといわれるワグナーの息子をインタビューした実験的ドキュメンタリー。『物質の演劇』は、カイエの同人、ジャン=クロード・ビエットが70年代末に撮った作品。セルジュ・ダネーが長い評論を書いている。それを読んで以来、見たいと思っているのだが、いまだに見る機会がない。Jim McBride の David Holzman's Diary も最初はいれていたのだが、これはいちおう DVD になっていることが判明(PAL 版で、中古でしか手に入らない模様)。Criterion からむかしレザーディスクで出ていたようなので、そのうち DVD 版が出るのではないかと期待している。

Paul Fejos、エルマンノ・オルミ(の初期作品)、シャルナス・バルタス、アルタヴァスト・ペレシャンの諸作品などなど、見たい映画はまだまだあるが、これがとりあえずのリストだ。



最後に、映画とは関係ないが、フェルメールの「デルフト眺望」の実物をいつか見るのがわたしの夢である。