明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ロッセリーニ『ルイ14世による権力の掌握』ほか

「もう私は映画を捨てようと思う。私にとって映画や、芸術一般や現代の知的活動は、みな直接の現象を観察することにとどまっているように思える。私はこうした現象の構成要素にまでさかのぼっていきたい。」

ロベルト・ロッセリーニ

Criterion がまたやってくれた。

ここから発売される DVD にはしばしば驚かされてきたが、今回のは特にすごい。なんと、ロッセリーニが晩年に撮った歴史物のテレビ映画をまとめて DVD にしてしまったのだ。こんな売れそうにないものを出して大丈夫なんだろうか。ここまでくるとちょっと心配になる。


Roberto Rossellini: Director's Series


昨年の冬に出た DVD。Criterion ではないが、ロッセリーニつながりでついでに挙げておく。

『ローマで夜だった』と『自由は何処に』(Dove' la liberta..? 未)の2作を収録の模様。



The Taking of Power by Louis XIV


Criterion Collection から。『ルイ14世による権力の掌握』(66、未)は、フランスでは比較的見る機会のある作品だが、日本ではおそらくまだまともなかたちでは紹介されていない。わたしはフランスで最初に見て、その後、仏版 DVD も購入している。仏版 DVD には字幕が入っていないので、英語字幕入りの Criterion 版の登場は朗報だ。

テレビの歴史物といってもNHK大河ドラマとは似ても似つかないものなので、その辺は覚悟しておいてほしい。この映画に描かれるほとんどすべての出来事は、まるでそこで初めて起きた出来事であるかのようにフィルムに収められている、とセルジュ・ダネーは書いている。「映画という芸術は歴史を再現することにつねに失敗する。だが、映画は過ぎてゆく瞬間 (le moment où ça passe) をとらえることができるのだ。」

『三銃士』で名高いダルタニアンも、数々の映画で描かれてきたイメージとはほど遠い姿で登場する。前に紹介したシュテファン・ツワイク『ジョゼフ・フーシェ』をサイドブックにするのもよい。権力に魅入られた男フーシェはここでも重要な役割を演じている。



Rossellini's History Films: Renaissance and Enlightenment


Criterion の Eclipse Series から。

最晩年に撮られたテレビ向け歴史映画 Blaise Pascal, The Age of the Medici, Cartesius の3作を収録( "Renaissance and Enlightenment" というのは、このパッケージのためにつけられただけのタイトルだと思うが、未確認)。


ルイ14世による権力の掌握』だけならそれほどでもなかったが、このパッケージにはほんとにびっくりさせられた。こんな地味なテレビ映画をだれが見るんだろうか。ディスク3枚で、収録時間は546分。しんどそうだと思わずに、Criterion を応援するために思い切って買ってしまおう。そこそこの値段はするが、日本の DVD にくらべたら驚くほど安い。