明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

「カイエ」2008年ベストテン覚書

アサイヤスは『夏時間の庭』だけでなく、『クリーン』と『NOISE』も公開されるようだ(この2本は音楽ものということでパッケージされたのだろうか)。しかし、もう少しタイムリーにできないものか。『クリーン』なんてもう5年前の映画なわけだし、こんなふうに時間差で公開されると、同時代感覚が希薄になってくるので困る。

まあ、公開してくれたんだし、文句は言うまい。『クリーン』は関西でも上映されたが、1日だけの特別上映だったので、見ている人はあまりいないだろう。アサイヤスとしては最高の出来ではないが、悪くない作品なので、是非見てほしい。



ところで、カンヌ映画祭が開幕した模様。


そういえば、「カイエ」のベストテンをまだチェックしていなかったと思い、今頃になって確認する。2008年の編集部ベストテンは以下の通りだった。


1.『リダクテッド』 Brian De Palma

2.『コロッサル・ユース』 Pedro Costa

3.『クローバーフィールド』 Mat Reeves

4.『ノー・カントリー』 Joel & Ethan Coen

5.『Two Lovers』 James Gray

6.『Valse avec Bachir』 Ari Folman

7.『Dernier maquis』 Rabah Ameur-Zaïmeche

8.『Hunger』 Steeve McQueen

9.『A Short Film About the Indio Nacional』 Raya Martin

10.『De la guerre』 Bertrand Bonello


このうちの半分はまだ日本では公開されていない。このブログで紹介したスティーヴ・マクイーンの『ハンガー』もまだ公開予定はないようだ。すでに公開が決まっているのは、イスラエルの監督アリ・フォルマンによるアニメ映画『Valse avec Bachir』ぐらいだろうか(今年公開の予定)。ベルトラン・ボネロの『戦争について』は allcinema で検索するとヒットするので、あるいはどこかで上映されたことがあるのかもしれない。ただし、公開予定は不明である。

崖の上のポニョ』が出品されたカンヌ映画祭で、数十年ぶりにフランス映画がグランプリを取ったということで地元では大きな話題になった(日本のテレビメディアではほとんど伝えられなかったけれど)『Entre les murs』などはベストテン入りしてもおかしくない出来だと思ったが、選んでいる人はほとんどいなかった(読者のベストテンではかろうじて10位に滑り込んでいる)。カンヌで受賞したことがひょっとしたらマイナスに働いたのかもしれない。ガレル、ドワヨン、デプレシャン、デパルドンなどのフランスの映画作家の新作は、どれも突出した評価は得られなかったようだ。スコリモフスキーの『Quatre nuits avec Anna』も、一人が1位に推していたが、公開時期がギリギリだったのか、少数意見にとどまっている。Albert Serra の作品が入っていないのも、たんに公開時期の問題なのだろうか。

ずっと気になっている Raya Martin の『A Short Film About the Indio Nacional』はやはりベストテン入りしていた。しかし、これも日本での一般公開はあまり期待できない。フランス系アルジェリア人監督 Rabah Ameur-Zaïmeche の作品も気になる。それにしても見られない映画が多すぎるな。『リトル・オデッサ』のジェームス・グレイの新作も気になるところだが、これも公開されるのだろうか。

個人的に気になるのは、Stéphane Delorme が一位に選んでいる、ポール・ニューマン監督作品『まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響』(72) だ。ポール・ニューマンに少なからぬ監督作品があることはあまり知られていない。allcinema の略歴でも、彼の映画監督としてのキャリアはまったく無視されている。しかし、彼が撮った数本の監督作品はどれも風変わりな映画であるという噂はかねがね聞いていた。最近、彼の監督2作目に当たる『レーチェル、レーチェル』という作品を見て、たしかに無視し得ぬ才能の持ち主だという印象を受けた。機会があたら、全作品を見てみたいと思うのだが、アメリカでもポール・ニューマンの監督作品の DVD はあまりなく、あったとしても手に入りにくい状態だ。どこでもいいから BOX で出してくれるとありがたいのだが・・・。

それにしても、『クローバーフィールド』が3位というのは驚いた。この映画のことはブログでも取り上げたし、それなりに評価している。しかし、これが3位というのはなんだかバランスを欠いているような気がしないでもない。