明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ウィリアム・A・ウェルマンの30年代

ウェルマンが30年代に撮った作品が見たいと前に書いたと思うのだが、意外と早く DVD化されてしまった。"Forbidden Hollywood Collection, Volume Three" という DVD-BOX で、なかに収められている6作品はすべてウェルマンが30年代に撮ったものだ。事実上のウェルマンBOX である。そういうタイトルにした方がわかりやすいと思うのだが、それでは売れないということか。ともかく、見られるようになったのはうれしい。


Forbidden Hollywood Collection, Volume Three
(Other Men's Women / The Purchase Price / Frisco Jenny / Midnight Mary / Heroes for Sale / Wild Boys of the Road) (2009)


The John Wayne Adventure Collection
(The High and the Mighty / In Harm’s Way / Island in the Sky / Hatari! / Donovan’s Reef) (1954)


ウィリアム・A・ウェルマンの『男の叫び』(Island in the sky) は、地図にないカナダの雪原で行方不明になった飛行機の乗組員たちの生き残りをかけた闘いと、彼らを必死になって捜索する仲間のパイロットたちを描いた、ウェルマンお得意の航空映画の佳作だ。第二次大戦直後ということで、GPS はもちろんレーダーさえなく、捜索は無線だけを頼りにつづけられる。その無線さえもやがてバッテリーが切れて使えなくなるとう絶望的状況が描かれるのだが、派手な演出があるわけでもなく、『飛べ!フェニックス』のような特異な人間ドラマが展開するわけでもない。地味な印象を与える映画には違いないだろう。事実、この直後に同じウェルマンによって撮られたシネマスコープ初のカラー航空映画『紅の翼』(The High and the Mighty)の評判の陰に隠れてなかば忘れられてしまったといわれる。

行方不明機の捜索など今ならもっと簡単なのにと思っていたが、先日のエール・フランスの墜落報道を見ていて、今でもこういうことがあるのかと驚いた。それにしても「男の叫び」というのはひどい邦題だ。見てない人には何の映画かわからないし、見た人にも意味不明のタイトルである。


Nothing Sacred


死の宣告をされた女性がニューヨークを訪れ、マスコミに取り上げられてセレブに仕立て上げられていくのだが、実は彼女は不治の病でも何でもなかった。そのことを隠して観光を楽しむ彼女と、彼女を取材する記者とのあいだにロマンスが生まれ・・・

という、マスコミを風刺したコメディで、キャロル・ロンバードのいささかスクリューボールな演技がなかなか楽しい作品だ。わたしが見たのは、字幕なしで、画質も悪いものだった。今年になって出たこの DVD はどうなのだろうか。