明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


このサイトはPC用に最適化されています。スマホでご覧の場合は、記事の末尾から下にメニューが表示されます。


---
神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

---

評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

フリッツ・ラング(?)の『Moontide』

ボツにしようと思った記事だが、他に書くこともないのでアップしておく。


☆ ☆ ☆


『脅迫者』の DVD が出た。

監督名はブリテイン・ウィンダストとなっているが、これがウォルシュ作品であることはだれもが知っている。これもむかしパリの映画館で見た。ふつうにウォルシュ作品として公開していた。さすがシネフィルの街だ。

有名監督がノンクレジットで関わっている作品は他にもたくさんある。うさん臭いものも多い。『脅迫者』の場合は、ほとんどウォルシュ作品と言い切っていいと思うが、同じくウォルシュがノンクレジットで監督したといわれている『サン・アントニオ』などはどうなのだろう。ウォルシュはどの程度関わったのか。日本でも DVD が発売されているが、まだ見ていないので、判断は保留にしておく。

そういえば思い出したが、最近、アーチー・メイヨの『Moontide』という映画を見た。フリッツ・ラングが関わったとされている作品だ。ラングが最初に撮影を始めたものの、途中でアーチー・メイヨに交代させられたといわれている。

フリッツ・ラング関係の文献はかなり読んでいるつもりだが、この映画のことは聞いたことがない。ホントかよと思いつつ、念のために見てみた。正直いって、ラングらしさはほとんど感じられない作品だった。少なくとも、『マン・ハント』と『死刑執行人もまた死す』のあいだに、ラングがこれを撮ったとは、にわかには信じがたい。

ジャン・ギャバンをハリウッドに招いて撮られたフィルム・ノワールで、主人公のギャバンがときおり発作に襲われて暴力的になるという設定が、ギャバン主演の『獣人』と、ラングによるそのリメイク『人間の欲望』と似ている点が、唯一、ラングの作品を連想させる部分だろうか。

とはいえ、興味深い点はいろいろある。夢のシーンをダリが担当したものの、結局カットされたという逸話もその一つだ。わたしはそんなに面白いとは思わなかったが、高く評価する人もいるので、見ても損はしないだろう。