明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

マルカム・ラウリー『火山の下』


マルカム・ラウリー『火山の下』(EXLIBRIS CLASSICS) (単行本)


マルカム・ラウリーの『火山の下で』が新訳でひさびさに登場する。わたしが学生の頃にはすでに絶版になっていた本だ。なぜ今頃という気もするが、まあとにかく、出してくれてありがたい。おおむかしに図書館で借りて読んだだけなので、この機会に手に入れて、ぜひ手元においておきたいと思う(ついでに『ウルトラマリン』をだれか訳してくれないだろうか。そう思って、なにか情報がないかとネットで検索していたら、同じことを言っているやつがいたので、見てみたら、5年ぐらい前に自分が書いた文章だった)。



映画好きは、ジョン・ヒューストンが撮った映画のほうを見ているとは思う。ヒューストン晩年の傑作のひとつだが、むろん、原作のすべてを掬い取っているわけではない。ラウリーのこの作品は、ブニュエルやロージーも映画化を考えていたといわれている。原作を読んで、幻のブニュエル版やロージー版を想像してみるのもいいだろう。ヒューストンの映画のほうは、日本ではまだ DVD にはなっていないようだ。ご覧になっていない方は、Criterion Collection(下写真)から DVD が出ているので、そちらで見ていただきたい。この DVD には、ラウリーの生涯を描いたドキュメンタリー映像も入っている。



わたしが学生のころは、白水社の「世界の文学」のライン・ナップを見て、世界の文学の現在を感じ取ったものだ。あのシリーズでは、アジア文学に関する展望がいささか欠けていたような気もするが、「世界の文学」にかわって現在新たに進行中の「エクス・リブリス」シリーズでは、そのあたりはどうなっているのだろう。

さて、この『火山の下で』は、その「エクス・リブリス」シリーズの姉妹編である「エクス・リブリス・クラシックス」の一冊として刊行されている。ライン・ナップがよくわからないのだが、この「クラシックス」のほうでは、過去の名作を基本的には新訳で発表していくようだ。こちらにも大いに期待したい。