明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

新作DVD〜レオ・マッケリー『明日は来らず』ほか

エミール・レノーという人のことをちょっと調べていた。いわゆる「映画前史」が語られる際に必ず登場する人物のひとりだが、マイブリッジやマレーなどとくらべるといささか影が薄い。とはいえ、同じぐらい重要な人物である。(ちなみに、Reynaud は、「レイノー」と二重母音的に表記されることが多いようだ。)

それで発見したのだが、スティーヴン・ミルハウザーが、エミール・レノーについてエッセイを書いていたのだ。わたしは柴田元幸が訳している作家にはなぜかあまり興味がなく、ミルハウザーについてもあまり知らなかったので、勝手なイメージを抱いていた。そのイメージのなかでは、エミール・レノーと結びつきそうな要素はまったくなかったので、これにはいささか驚いた。しかも、その文章は翻訳されていたのだ(『リテレール』6)。

『リテレール』というと、安原顕がやっていたあの雑誌だ。いや、待てよ、『リテレール』なら何冊か持っていたんじゃないか。と思って、調べてみたが、あったのは別冊の『映画の魅惑』だけだった。まあ、そんなものか──

などという話はどうでもいい。本題に入ろう。

といっても、別に書くことはないので、また例によって、DVD の紹介だ。

『アルフレッド・ヒッチコック HIS EARLY WORKS DVD-BOX』


目についたのでいちおう紹介しておくが、IVC である。どうせまた、以前出していたものを集めただけだろう。ここから出ている初期のヒッチコックは、画質もよくないし、明らかに欠落している場面も目立つ。たとえば、『恐喝』は、最初サイレントで撮影され、その後、トーキーとしてわざわざ撮り直されたので、2つのヴァージョンが存在するのだが、ここから出ているものはトーキー版だけである。500円 DVD で出ているものもトーキー版だったはずだ。海外では、2ヴァージョンとも収録した DVD も出ている(サイレント版とトーキー版には、ほとんどまったく違いがなく、それが逆に興味深い)。


レオ・マッケリー『明日は来らず』


小津の『東京物語』に影響を与えたともいわれるマッケリーの傑作(ちなみに、McCarey は「マケアリー」と表記するほうが原音に近い、と思う)。

実は、最近たまたま、Criterion 版で見直したのだが、さめざめと泣いてしまった。泣くしかない映画である。ストーリーはたしかに『東京物語』に似てはいる。しかし、全然別物だ。滑稽で、残酷な、この美しい作品は、メロドラマとしての余韻さえ与えてくれず、意外にも、アメリカで公開されたときは興行的には惨敗だった。

タル・ベーラ『倫敦(ロンドン)から来た男』


イエジー・カワレロヴィッチ『影』


アラン・ロブ=グリエ『危険な戯れ』


昔ビデオで出ていた作品だが、見た記憶がない。ロブ=グリエの映画はほとんど見てるんだが……。

『アンドロクレスと獅子』


Criterion から出ているバーナード・ショーの映画化作品を集めた Collection で見たが、たいした映画ではなかった。バーナード・ショーのファン以外は見る必要ない(かも)。

イエジー・スコリモフスキ『ザ・シャウト さまよえる幻響』


これも以前から出ていた気がするが……。


『エッセンス・オブ・スコリモフスキ (単行本(ソフトカバー))』


こんなものも出てしまった。確信はないが、スコリモフスキ祭りの準備が、水面下でひそかに進められているのかもしれない……。