明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ゴダール『Film Socialisme』、R・クレイマー『Walk the Walk』ほか


すべてフランス版。

ジャン=リュック・ゴダール『Film Socialisme』


上映が予定されていたカンヌ映画祭直前に Web に予告編が流れて話題になったゴダールの新作が、早くも DVD になった。一時間を超える長編としては『アワーミュージック』以来。日本公開は微妙か? それにしてもふざけたタイトルだ。


アルベルト・セラ『Albert Serra Collection - 2-DVD Set ( El cant dels ocells / El senyor ha fet en mi meravelles ) ( Birdsong (Bird song) / The Lord Worked Wonders In Me ) [ NON-USA FORMAT, PAL, Reg.2 Import - France ]』 ( DVD + Livre 144 pages)


「カイエ」でも評価の高いスペインの映画作家アルベルト・セラによる『El cant dels ocells』『El senyor ha fet en mi meravelles』の2作品を収録。


マノエル・ド・オリヴェイラ『Manoel de Oliveira 100 years 22-DVD Anniversary Box Set』 ( Mon cas / Os Canibais / A Vã Glória de Mandar / A Divina Comédia / O Dia do Desespero / Vale Abraão / A Caixa / O Convento / Party / Viagem ao Princípio do Mundo / Inquietude / La Le


ほぼ全集に近い感じですかね。『Mon cas』が入っているのは嬉しいけど、高いね。


ロバート・クレイマー『Walk the Walk & Doc's Kingdom』


こないだ『Milestones』を紹介したばかりなのに、『Walk the Walk』と『Doc's Kingdom』まで出てしまった。こちらは「カイエ」から出ている DVD シリーズのなかの一本で、『Milestones』とは販売元は別のはず。こんなにあっさり出るなら、もっと早くに出してほしかった。


エリア・スレイマン『LE TEMPS QU'IL RESTE』


ちょっと古い情報だが、これも紹介しておく。スレイマンの乗ったタクシーが霧のなかで行き場をうしなって立ち往生する場面ではじまった映画は、彼の幼少時代から現代にいたるパレスチナの歴史を語りだす。スレイマンによる半自伝的作品。


マルコ・ベロッキオ『VINCERE』


ムッソリーニの最初の妻 Ida Dalser の目を通してみられたファシズムの歴史。妻といっても、結婚を証明する書類は残っておらず、ムッソリーニからも存在を否定され、なかば監禁状態で病死する。ムッソリーニと彼女のあいだに生まれた息子も、厳重な監視下におかれつづけ、母親と同じく不遇のうちに死を迎える。彼女の名前は、ファシズムの時代が終わってからも、長らく黙殺されつづけた。ここ最近のベロッキオの映画のなかでは、最高傑作かもしれない。


『L'Enfer de Henri Georges Clouzot』 (César 2010 du Meilleur Film Documentaire)


60 年代の半ばに、ロミー・シュナイダーとセルジュ・レジアニ主演で撮影が開始されるも、制作途中で企画が頓挫して未完に終わったアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの幻の作品『Inferno』をめぐるドキュメンタリー映画。妻が浮気しているのではと疑って嫉妬に狂う夫の内面世界を描いた作品で、シャブロルの『愛の地獄』はこの作品のリメイクというか、これをもとにつくられた。クルーゾーは、夫の妄想を描くにあたって、さまざまな視覚的実験を試みようとしていたことが、このドキュメンタリーを見るとわかる。完成していたら、狂い咲きのような傑作になっていたかもしれないし、あるいは、目も当てられない失敗作になっていたかもしれない。未完成の作品は、必要以上に妄想をかき立てる。

余談だが、ロミー・シュナイダーは日本では想像できないぐらいフランスで人気が高い。生活用品しか置いていないような地方のショップのビデオ売り場に申し訳程度に並べられているビデオのなかに、ロミー・シュナイダーのコーナーが設けられていたりするので、驚く。