明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

日々の泡〜『コロッサル・ユース』『アイアムアヒーロー』ほか


最近のお気に入り

ヤング・マーブル・ジャイアンツ『コロッサル・ユース』


イギリスの伝説のロック・バンド、ヤング・マーブル・ジャイアンツが 1980 年に発表した彼らの唯一のアルバム。いま聞くと泣けます。

基本、ガールズ・バンドというか、女性ヴォーカルのバンドだったら、たいていなんでも好きなんだけれど、最近は、こればっかり聞いてます。すかすかのサウンドに、クールでインテリジェントなヴォーカル。やっぱ、パンクってこれだわ。小津がパンクなら、この音楽は小津だぜ、とかいってみたりして。

岡崎京子『バージン』のあとがきに名前が出てきたりするので、このアルバムは岡崎ファンにもなじみ深い。映画のタイトルに使われたのでもう少し注目されるかと思ったが、そうでもなかった。国内で売られているCDはどれも品切れ寸前なので、早めに買っておいた方がいいかも。


花沢健吾『アイアムアヒーロー』


ゲームの中の仮想現実世界にのみ込まれていく中年オタク男性を主人公に描いた『ルサンチマン』という作品で注目していた作家なんだけれど、その次に発表した『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を読んでいなかったせいか、これを読んだときは、『ルサンチマン』より3段階ぐらい進化していたのでびっくりした。

簡単にいうと「ゾンビ」+「オタク」でできているマンガです。主人公はやはりむさ苦しい中年オタク。1巻目は漫画家アシスタントである主人公の日常がひたすら描かれてゆくだけなので、注意して読まないと、その背景で起きている異常事態に気づかない可能性さえある。この長い《引き》が利いているので、1巻目の最後の最後で、ゾンビが文字どおり背景から前景へと迫ってくる場面が、すごい迫力になっている。前置きが長いよという人は、萌え要素を詰め込んだだけのごくごく平凡なゾンビマンガ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』でも読んでおけばよい。こちらは、いかにも頭の悪そうなマンガではあるが、ジェットコースター式に楽しませてはくれる。

ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以来、ゾンビはしゃべらないというのが暗黙の了解になっていたと思うのだが、このマンガのゾンビは、言葉を発する。ずっと引きずられていた前の彼氏への思いを断ったかに思えた恋人が、ゾンビになったとたんに口にするのが、その前の彼氏の名前だったり、ゾンビになったアパートの大家が、「や、ち、ん」といいながら迫ってきたりと、いずれも無意識に出てくるだけのゾンビの言葉が、逆に生々しかったりする。

異常事態をこの目で見たあとも、主人公が、これはきっと夢かなにかに違いないといって、たぶん隣町に行けばふつうの日常があるはずだと自分を納得させ、電車に乗るところもいい。電車の中では、何も知らない乗客が、どうでもいいおしゃべりをしてたりするのだが、ふと窓の外に目をやると、遠くの方でゾンビが人を襲っているのが見えるという、この距離感が実にリアルで、それがこの作品を説得力のあるものにしている。


うぬぼれ刑事


最近、映画やテレビドラマを見ていて笑えた試しがないのだけれど、これは笑えました。この笑いのセンスはなかなかのものですよ。少なくとも「トリック」の堤幸彦よりは断然いい。とくに蒼井優が出演した回は最高だった。しかし、3話目はイマイチだったので、このあとマンネリで尻すぼみになっていく可能性もある。とりあえず、いまやっているドラマのなかではいちばんユニークで、主演俳優もはまっているし、脇役のキャラクターも邪魔をしない程度に目立っていて、バランスがいい。