明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

アブデラティフ・ケシシュ『クスクス粒の謎』ほか

アブデラティフ・ケシシュ『クスクス粒の謎』


Abdellatif Kechiche の『The Secret of the Grain』(2007) が Criterion から DVD で登場。

アブデラティフ・ケシシュ(という読み方でいいのか?)は 、1960 年、チュニジア生まれで、元々は俳優だった。2000 年の『Poetical Refugee』が監督デビュー作だから、監督としては遅咲きといっていい。『The Secret of the Grain』は、第64回ヴェネチア映画祭で、審査員特別賞を受賞。フランスで公開されたときは、非常に話題になり、カイエの表紙も飾った。栄誉あるルイ・デリュック賞も受賞している。しかし、日本ではほとんど知られていない人物といっていいだろう。「アブデラティフ・クシシュ」で検索すると、結構ヒットするが、その大半はヴェネチア映画祭がらみの記事の中だし、その話題もすでに3年前のものだ。日本公開はあまり期待できないかもしれない。

ちなみに、『The Secret of the Grain』は、「カイエ・デュ・シネマ」の編集部が選んだ21世紀最初の10年に撮られた映画ベストテンの第6位にはいっている。

(Criterion からは DVD と同時にBlue-Ray版も発売されている。)


『The Actuality Dramas of Alan King (Eclipse Series 24) (Criterion Collection)』


正直、アラン・キングという監督については初耳だった。しかし、カナダには、ピエール・ペローやミシェル・ブローなど、まだまだお宝が隠されている。アラン・キングもそのひとりかもしれない。


ジョセフ・フォン・スタンバーグ『Three Silent Classics By Josef Von Sternberg (Underworld / Last Command / Docks of New York) (Criterion Collection)』


ジョージ・キューカー『Susan And God』『No More Ladies』


キューカーのこの2本はたぶん初ソフト化だと思う。



ついでに、去年出たキューカーの DVD を2本紹介しておく。

『Bhowani Junction』は、イギリスからの独立の気運が高まる激動のインドを舞台に、大人の恋愛を描いたキューカー絶頂期の傑作。ビデオのトリミング版では見ていたのだが、この DVD でやっとシネスコで見ることができた。


『The Actress』は、タイトルから分かるとおりの女優ものである。といっても、この映画のヒロイン、ジーン・シモンズは、女優の卵ですらなく、たんに女優にあこがれているだけの田舎娘だ。その父親を演じているのがスペンサー・トレイシーで、当然ながら、娘が女優になることには猛烈に反対。一方、母親役のテレサ・ライトは、当然ながら、陰で娘を応援する。夢の世界に生きている娘と現実とのギャップを、キューカーは巧みに笑いに変えていく。家の内部を捉えるキャメラの閉鎖的なフレーミングが息が詰まるような効果を上げている。