明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

サフディー兄弟『The Pleasure of Being Robbed』


ニューヨークのインデペンデント映画作家サフディー兄弟が二十歳そこそこで撮ったデビュー作『The Pleasure of Being Robbed』は、これ一本で才能を確信させるほどの傑作ではないが、カサヴェテスの『アメリカの影』を初めて見たときのことを思い出させるような新鮮さに満ちている。

町をうろつきながら人のものを盗んでまわる少女を、手持ちキャメラで淡々と捉えつづけるだけのベン・サフディーとジョシュア・サフディーによるこの長編デビュー作は、監督の若さもあってカンヌで話題を集めた。といっても、カラックスのようにいかにも才気にあふれていて、賞賛も批判も一身にあびる恐るべき新人というのとはちょっと違って、子供のころからキャメラをおもちゃのようににぎっていたガキがそのまま大人になって、それこそ呼吸をするように映画を撮っているといった感じの、少しの気負いもないみずみずしさが作品からは感じられる。

まだ見ていないが、この次に撮った最新作の『Go Get Some Rosemary』も「カイエ」で高評価をえていた。今のところ未確認飛行物体という程度の存在だが、このまま観測を続けていくつもりだ。


関連作品:Ronald Bronstein『Frownland』(Ronald Bronstein は『Go Get Some Rosemary』の編集をつとめている人物。)