マーク・ロブスン『七番目の犠牲者』(The Seventh Victim, 43)★★★
「世紀末オカルト学院」というアニメを見ていたら、シャワールームの半透明のビニールの向こうにふわっと人影が現れて消えるという場面があった。『サイコ』(60)のシャワールームの場面はこんなところでも使われている。だが、実をいうと、これと同じことを『サイコ』の20年前にやっている奴がいたのだ。『The Seventh Victim』のヴァル・リュートンである。
『The Seventh Victim』はマーク・ロブスン監督のデビュー作だが、これはもうプロデューサーのヴァル・リュートンの作品であるといってしまっていいだろう。『キャット・ピープル』や『私はゾンビと歩いた』などで、低予算を逆手にとり、肝心なもの(モンスターや殺人鬼など)を直接画面に見せずにただ暗示するだけによって恐怖の雰囲気を作り上げるという、この時代に彼が作り上げたホラー映画の新たなスタイルは、ある意味、この『The Seventh Victim』でとことん突き詰められている。
先ほどのシャワールームの場面や、まるで社交クラブのように撮られた悪魔集会、そして、目ではなく耳をそばだててないと何が起きたか理解できないラストなど、ヴァル・リュートン美学の極みがここにあると思うのだが、あまり書くとネタバレになるのでやめておこう(『The Seventh Victim』は、ホラーというよりは、フィルム・ノワールに近い作品で、その意味でもなかなか話しづらいのだ)。ほんの少ししか登場しないが強烈な印象を残すジーン・ブルックスの変な髪型(クレオパトラふう?)も注目だ。
ヴァル・リュートンが製作したホラーの代表作は IVC から DVD が出ているのだが、何故かこの作品は入っていない。