明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

DotDash メールマガジン第2号〜『デイヴィッド・ホルツマンの日記』


DotDash メールマガジン第2号が発行されました。今回は、ジム・マクブライドの長編デビュー作『デイヴィッド・ホルツマンの日記』(David Holzman's Diary, 1967)という映画のことを紹介しました。当時流行していたシネマ・ヴェリテをパロディにし、モキュメンタリー映画の元祖といわれたりもする作品ですが、それだけではない魅力も持っている作品です。『悪魔のいけにえ2』の脚本を書くことになるL・M・キット・カーソンが主演しているというのも、興味深い。60年代末のいろんなムーヴメントの交差点になっている作品とでもいえそうな、そん映画です。

一部だけ引用。

エクレール製の16ミリキャメラやナグラの録音機材を「友人たち」と呼び、名前まで付けているホルツマン。彼は映画を通してしか周囲とコンタクトできないかのようだ。映画が彼の人生に取って代わってしまったとでも言えばいいか。やがて、恋人ペニーは、裸でベッドに横たわる姿を無断で撮影されたのに腹を立てて、彼のもとを去り、挙げ句の果てには、撮影機材さえ盗まれてしまう。映画を通して人生に「フォーカスを合わせる」どころか、映画に撮ることで彼の人生は次第に壊れてゆく。ホルツマンは映画を撮り始める前以上に、疎外され、混乱し、孤独になってしまうのだ。

ホルツマンの映画は、Web キャメラで撮られた自分の日常を、インターネットを通じて不特定多数の人々に垂れ流す今日の人たちの姿を、はるかに予言しているということもできるだろう。自分のすべてを人目にさらしながら、ホルツマンには自分のことがまるで見えていないようだ。それもまた、ナルシスティックで、露出狂的なネット社会の一側面を予告しているように思える。

しかし、それだけではない。この映画にはひとつ仕掛けがあるのだ。」


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