DotDash メールマガジン第2号が発行されました。今回は、ジム・マクブライドの長編デビュー作『デイヴィッド・ホルツマンの日記』(David Holzman's Diary, 1967)という映画のことを紹介しました。当時流行していたシネマ・ヴェリテをパロディにし、モキュメンタリー映画の元祖といわれたりもする作品ですが、それだけではない魅力も持っている作品です。『悪魔のいけにえ2』の脚本を書くことになるL・M・キット・カーソンが主演しているというのも、興味深い。60年代末のいろんなムーヴメントの交差点になっている作品とでもいえそうな、そん映画です。
一部だけ引用。
「エクレール製の16ミリキャメラやナグラの録音機材を「友人たち」と呼び、名前まで付けているホルツマン。彼は映画を通してしか周囲とコンタクトできないかのようだ。映画が彼の人生に取って代わってしまったとでも言えばいいか。やがて、恋人ペニーは、裸でベッドに横たわる姿を無断で撮影されたのに腹を立てて、彼のもとを去り、挙げ句の果てには、撮影機材さえ盗まれてしまう。映画を通して人生に「フォーカスを合わせる」どころか、映画に撮ることで彼の人生は次第に壊れてゆく。ホルツマンは映画を撮り始める前以上に、疎外され、混乱し、孤独になってしまうのだ。
ホルツマンの映画は、Web キャメラで撮られた自分の日常を、インターネットを通じて不特定多数の人々に垂れ流す今日の人たちの姿を、はるかに予言しているということもできるだろう。自分のすべてを人目にさらしながら、ホルツマンには自分のことがまるで見えていないようだ。それもまた、ナルシスティックで、露出狂的なネット社会の一側面を予告しているように思える。
しかし、それだけではない。この映画にはひとつ仕掛けがあるのだ。」
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