明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

DotDash メールマガジン第3号〜『僕の無事を祈ってくれ』

DotDash メールマガジン第3号には、ラシド・ナグマノフの『僕の無事を祈ってくれ』について書きました。カザフ・ニューウェーヴのリーダー的存在であったナグマノフが、ペレストロイカ直後の1988年のカザフスタン共和国で、韓国系ロックシンガー、ヴィクトル・ツォイを主演に撮りあげた異色のアクション映画です。ポストモダン的とでもいうべき引用の遊戯と、ロマンティシズムが渾然一体となった風変わりな映画で、忘れがたい印象を残します。

一部だけ引用。

「とにもかくにも、この映画には様々な文化的ステレオタイプがちりばめられており、飛び交う言語も、カザフ語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、イタリア語、英語など様々である。そして映画を撮った監督は、カザフ語が喋れないカザフスタン人であり、主演は韓国系ロシア人という、この上なくキッチュな作品がこの『僕の無事を祈ってくれ』なのである。

そういうわけで、この映画は、ハリウッドの犯罪映画を独自にリメイク(失敗)した『勝手にしやがれ』のゴダールと比較されたり、ポストモダンという言葉で語られたりもするのだ。日本で公開されたとき、大部分の観客は、この作品を、若者たちの閉塞感といらだちをロマンチックに描いたものとして受け止めたように思える。この映画にロマンチックな要素があることは否定しないが、最も重要である、この作品の遊戯的な、あるいはポストモダンな側面は、見過ごされてしまった気がする。そういう意味でも、今こそ再発見する価値のある一本だ。」

下の仏 PAL 版はフランス語と英語(あとオランダ語の)字幕つき。