明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

『市民ケーン』劇場その5――ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』

【4月8日】
神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」


ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』(41)


"It's a picture about a picture Hellzapoppin."


映画のなかの登場人物が映写技師に向かって、フィルムを巻き戻せとどなる場面から始まるスラップスティック調の不条理コメディの〈傑作〉。フランスのテレビで初めて見たときは、この時代に〈映画内映画〉をテーマにしたこんな映画があったのかと驚いたものだ。

何よりもびっくりしたのはこのシーンだった。冒頭近くで、映画の(中の映画の)主役二人が雪の中を歩いていると、魚と一緒に「ローズバッド」と書かれた橇がかけてある。男はすかさず、「この橇はたしか燃やされたはずだが」とつぶやく。


このユニヴァーサル社製作のコメディが公開されたのは『市民ケーン』と同じ1941年なのだが、ローズバッドと橇はこのときすでにギャグにされていたわけである。

最近見直してみたら、正直、古さしか感じなかった。しかし、これがコメディ映画史上で重要な作品であることは今でも変わりない。