明るい部屋:映画についての覚書

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

セシル・B・デミル『大平原』

セシル・B・デミル『大平原』(Union Pacific, 39) ★★




大陸を横断する鉄道ユニオン・パシフィックとセントラル・パシフィックの建設を背景に、金儲けのためにそれを妨害する一味(一味のボスを演じるブライアン・ドンレヴィは、この年、4本の西部劇で同様の悪役を演じている)と、彼らから鉄道を守る役目を政府から与えられた男(ジョエル・マクリー)との攻防が描かれ、そこに、鉄道機関士の娘(バーバラ・スタンウィック)、ドンレヴィ一味の下で働いているロバート・プレストン、彼とは戦友だったが今は敵同士のマクリーの3人の三角関係がからむ。


1939年は、いろいろ議論はあるがハリウッドで最初に撮られた長編映画とされるデミルの西部劇『スコウ・マン』(14) の25周年を記念する年にあたっていた。また、この年は、1869年の大陸横断鉄道の完成70週年でもあった。メジャーの映画会社が揃って大作西部劇の製作に乗り出したこの年、デミルがこの西部劇を撮ったのは、ある意味、当然であったといえる。

『地獄への道』に描かれる鉄道とは対象的に、アメリカの未来を象徴するものとして描かれる鉄道。物語の大筋がフォードの『アイアン・ホース』と酷似していることに驚かされるが、『大平原』の原作は、実は、『駅馬車』の原作と同じ、アーネスト・ヘイコックスである。ヘイコックスはおそらく『アイアン・ホース』に大いに触発されて原作を書いたのであろう。

インディアンの描き方は、『駅馬車』と似ているようでいて、細かく見ていくとフォードとは全然違う。この映画では、インディアンは愚かな存在として徹底的に戯画化されていて、そこには何の敬意も感じられない。「死よりも残酷な運命」のシーンも、『駅馬車』のなかの該当シーンが持つ意味と比べると、ニュアンスはかなり違っている。

鉄道工夫たちに支払われるはずの金が入った給料袋を強奪したプレストンをスタンウィックがかばおうとするくだりも、なんだかデミルの人間性が現れているようで、見ていてちょっと気分が悪い。

しかし、倫理的な問題を別にすれば、インディアンの列車襲撃や、派手な列車転覆シーンなど見せ場満載の大スペクタクル西部劇であり、39年の西部劇ルネサンスを代表する一本であることは間違いない。


ちなみに、『スター・ウォーズ』の冒頭の下から上に上がっていくクレジットは、この映画のオープニング・クレジットを真似したものだと言われている。