アラン・ドワン『フロンティア・マーシャル』(Frontier Marshal, 39) ★★
保安官ワイアット・アープのトゥームストーンでの活躍を描いた西部劇。『荒野の決闘』と同じスチュアート・N・レイクの小説を原作としているため、登場人物やエピソードはフォード作品と重なる部分が多い。ちなみに、レイクはアンソニー・マンの『ウィンチェスター銃’73』の原作者でもある。
酒場で暴れているならず者をアープが外に引きずり出して町の人たちに一目置かれるエピソードとか、『荒野の決闘』のチワワ(リンダ・ダーネル)にあたるジェリー役のビニー・バーンズが賭博師とグルになってイカサマをしているところをアープ(ランドルフ・スコット)がみつけ、彼女を水桶に放り投げるところとか(その直後に、ドク・ホリディが登場し、アープと一触即発の状態になるところも同じ)。
『荒野の決闘』ではアープ兄弟とクラントン一家の対立が物語の中心になっていたが、ドワンの映画ではアープに兄弟はいないし、クラントン一家も登場しない。ドクが、流れ弾にあたって大怪我をした子供を手術して命を救った直後に(このエピソードも『荒野の決闘』に出てくる)、ならず者に殺され、アープがたった一人でOK牧場に向かうところが映画のクライマックスになっている。ところが、酒場から一分も歩かないところに牧場があるという空間の描き方が何だか異様だった。
『荒野の決闘』と素材が同じだけにどうしても並べてみると見劣りしてしまうし(ドク役のシーザー・ロメロは意外と悪くないが、リンダ・ダーネル、キャシー・ダウンズと比べると二人の女優はいささか影が薄い)、『バファロウ平原』『逮捕命令』『対決の一瞬』など、50年代にドワン自身が撮った西部劇の傑作の数々と比べても、随分マイナーな印象を受ける。しかし、フォードの演出の独自性を見極めるために、この映画はなかなか助けになる(フォードの見せない演出)。