明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

リチャード・C・サラフィアン『荒野に生きる』


リチャード・C・サラフィアン『荒野に生きる』(Man in the Wilderness, 71) ★★


いささか冗長な気もするが、なかなかユニークな西部劇として記憶に残る作品。もっとも、アメリカン・ニューシネマの名作『バニシング・ポイント』の監督リチャード・C・サラフィアンが撮った映画だけあって、この映画は西部劇というジャンルにふつうに期待するものとはだいぶかけ離れている。

探検隊のガイド役を務める主人公(リチャード・ハリス)が、旅の途中で熊に襲われて瀕死の重傷を負う。探検隊のリーダーは、彼を置き去りにし、場合によっては殺せと部下に命じる。奇跡的に生き残った主人公は、彼らへ復讐することだけを考えて、ひたひたと跡を追いかける。

アンソニー・マンの『怒りの河』の後半をちょっと思い出させもする展開だが、実際は、復讐話は二の次で、主人公が傷を癒やしながらいかにして荒野のなかでサヴァイヴァルするかを描くことに映画の主眼は置かれている。その意味で、「荒野に生きる」という邦題はなかなか的を射ている。

面白いのは、探検隊の一行が大きな船を引っ張りながら移動していることだ。船を担いで山を超える西部劇なら、この30年前にすでにキング・ヴィダーが『北西への道』でやっているが、この映画に出てくる船はあんなボートではなく、何十人も乗せることができ、縄梯子で昇り降りするような、とても大きな船で、しかも大砲まで積んでいる(インディアンが襲ってきたときは、この大砲をぶっ放すのだ)。しかも、映画の最初から最後まで、雪が降ろうが、敵が攻めてこようが、探検隊はこの船を延々と運び続けるのだ。

そんなわけで、この探検隊のリーダーは船長と呼ばれているのだが、それを演じているのがなんとジョン・ヒューストンなのである。黒いコートに山高帽という西部劇らしからぬ出で立ち。息子同然のハリスをあっさり置き去りにし、いつも何を考えているのかわからい。この船長を演じるヒューストンは、自分が映画化した『白鯨』に出てくるエイハブ船長を意識しているとしか思えない。

最後にハリスとヒューストンが対峙する場面の〈スカシ〉かたは、自分的にはピンとこなかった。このラストも70年代的というべきなのか。


レヴェナント:蘇えりし者』はこれのリメイクか、でなければパクリだと思うんだけど、それは公言されてないんですかね。IMDb にはそういう記述はないみたいなんだけど。