明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

チャン・チェ『少林拳対五遁忍術』


急に暇になったので、これからはブログをまめに更新していこうと思う。

チャン・チェ少林拳対五遁忍術』★½


チャン・チェのショー・ブラザーズ時代後期の作品。カンフー映画ファンの間では評価が高いようなのだが、わたしはあまりノレなかった。ジミー・ウォングが出ていないチャン・チェはいまいち悲壮感に欠ける。やはり主人公には片腕くらい失くしてもらわないと。とはいえ、カンフーと忍術の戦いというのはなかなかユニークであり、見れば話の種にはなる。

映画の冒頭に、忍者についてはこれこれの資料を参考にしたという字幕が出るのだが、どう見ても怪しい。金色の派手な衣装を着た忍者(世を忍ぶから忍者ではないのか?)が、頭にかぶった金色の笠で光を反射させて相手の目を晦ませ、そのスキに笠から短剣を飛ばせて攻撃するとか、デタラメもいいところだろう。このデタラメさを楽しめるかどうかで、この映画の評価も変わってきそうだ。

か弱い娘のふりをして主人公に近づき、お色気で誘惑しようとする日本人忍者の名前が「ジュンコ」という妙にモダンな名前になっているのもいささか変である(全裸にはならずに、鎖帷子に似せたような襦袢を着て寝台に横たわったりするところが、逆に艶めかしい)。両手両足をそれぞれ縄で縛って引きちぎってバラバラにしたり、からだを真っ二つにするなど、チャン・チェお得意の残酷描写もあいかわらず健在。チャン・チェのエロティシズムはむしろ、こういった残酷な身体描写にこそ表れていると言ったほうがいいかもしれない。


オリヴィエ・アサイヤスの書いたチャン・チェ論を読みたいと思っているのだが、それが掲載されている「カイエ・デュ・シネマ」の香港映画特集号が手に入らない。むかし何度も本屋で見かけてはいたのだが、結局買いそびれてしまった。今でも買おうと思えば買えるとは思うのだけれど、正直、そこまでしてほしくはない。どこかで手軽に読めないものか。