明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。





























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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

『アンジェラ・マオの女活殺拳』

『アンジェラ・マオの女活殺拳』(Hapkido, 72) ★★½


アンジェラ・マオインが活躍する女ヒーロー物。ブルース・リーと共に武侠映画(カンフー映画、とは微妙に違うが、ややこしいのでとりあえず同じものとして扱う)がアメリカに初めて知られはじめた頃に作られた、ゴールデン・ハーヴェスト初期の作品。

原題の "Hap Ki Do" は、漢字では「合気道」となるが、日本でよく知られているあの合気道とは別物である。ハプキドーは、日本で大東流合気柔術を学んだ韓国人・崔龍述(チェ・ヨンス)が、韓国に帰って道場を開いて広めたのが始まりと言われる。日本の合気道もルーツは同じだが、見ての通り、まったく別物に発展しているので、それだけに漢字で書くと同じ名前なのが事態をよけいにややこしくしている。

この映画も、始まりは韓国を舞台にしている。日本による統治下にある韓国でハプキドーを学んだ3人の中国人が、日本人といざこざを起こして韓国にいられなくなり、中国に帰ってハプキドーの道場を開くところから、物語が展開していく。やはり日本人の支配下にある中国でも、3人の中国人たちは日本人の嫌がらせを受け、耐えに耐えるが最後どうにも我慢ならなくなって、敵と相対するというお話。

冒頭に出てくるハプキドーの師匠の教えが、とにかく「忍」の一言で、壁中に「忍」という字が書かれていたりする。「でも、どうしても我慢できなくなったときはどうすれば?」と問う弟子に、師匠は、どうしても我慢できなくなったらこの秘伝の書を開けるが良いと、一通の封筒を手渡す。日本人の嫌がらせに耐えに耐えた弟子たちが、ついに我慢の限界に着て、そうだあの秘伝の書がったと思い出して封筒を開けてみると、中に入っていた一枚の紙切れにはただ一言、「忍」とだけ書いてあった、という場面が苦笑を誘う。

こんな風に、耐えて耐えて最後に爆発するという王道パターンの物語のはずなのだが、アンジェラ・マオと兄弟弟子のサモ・ハン・キンポーが、何かとすぐにキレてしまうキャラクターを演じていて、途中で何度か爆発するので、クライマックスのシーンにいまいちカタルシスが感じられなかったりする(サモ・ハンはこの映画以外でもアンジェラ・マオと何度か共演しており、役者としてだけでなく、アクションの指導でも大きく力を貸したと言われる)。

とりわけ際立ったところのない作品であるが、それだけにアンジェラ・マオのアクション女優としてのポテンシャルを感じさせてくれる楽しい映画だ。アンジェラ・マオは、海外では、なぜか、主役でも何でもないブルース・リーの『燃えよドラゴン』での演技が一番有名だったりする(日本でもそのような評価に若干近い)。アンジェラ・マオのファンは少なくないが、彼女のスターとしての評価はまだまだ低いと言うべきなのかもしれない。

『女活劇拳』はマオの映画のなかでも人気が高いし、日本版 DVD では、マオイスト(むろん、毛沢東とかけてある)を自称する宇田川幸洋がコメンタリーをやっていて、マオについて嬉々として喋っっているので、アンジェラ・マオ入門としては絶好の作品ではないだろうか(Amazon のレビューの数の多さを見れば、この映画の人気の高さがわかるだろう)。

ちなみに、この作品にはジャッキー・チェンもチョイ役で2度ほど登場する(ホントのチョイ役なのでよく見ていないと絶対に見逃す)。それから、これはたぶん宇田川幸洋も言及し忘れていたと思うのだが、アンジェラ、サモ・ハンと並ぶもう一人の弟子を演じているカーター・ワンは、数々のカンフー映画以外にも、例えば、ジョン・カーペンターの『ゴースト・ハンターズ』で嵐三人組の一人を演じていることでも知られる。