Dinu Cocea『無法者たち』(Haiducii, 1966) ★★
これも『ヴラド・ツェペシュ』と同じくワラキアを舞台にしたルーマニア映画。描かれる時代は『ヴラド・ツェペシュ』と違って18世紀だが、やはり国はオスマントルコ帝国の存在に苦しめられている。そこに、サルブとアムサという義兄弟の義賊が現れ、金持ちから奪った金銀財宝を貧しい者たちにばらまき始め、民衆の喝采を浴びる。しかし、金に執着する弟とのあいだに確執が生まれ、リーダーである兄は裏切られて警察に捕まってしまう。兄が牢屋に入っている間に、弟は兄の恋人を奪って自分のものにしてしまうのだが、やがて脱獄した兄は二人に復讐を誓う……。
たぶん、ヘンリー・キングがジェシー・ジェームズを描いた『地獄への道』あたりが下敷きになっているのではないかと思うのだが(「アウトローたち」を意味する "Haiducii" というタイトルを見るにつけても、西部劇を意識しているのではないか)、国定忠治だって似たような物語を提供しているし、どこの国にもある物語でもある。
マルトン・ケレチ『伍長とその他の者たち』(A tizedes meg a többiek, 1965) ★★
第二次世界大戦中、密かにためていた金を胸にぶら下げた手榴弾のなかに隠し、オートバイに乗って突如脱走を企てた伍長が、空き家だと思って入り込んだ一軒家の館には、シニカルな執事と、彼同様に戦場を逃げ出した者たちが潜んでいた。一癖も二癖もある彼ら(その他の者たち)とともに、伍長はその館の住人になりすまし、ナチやロシア兵が代るがわる闖入してくるたびに、身を隠し、演技をし、なんとか切り抜ける……。
ナチス・ドイツの次はソ連というぐあいに、いつも他国によって蹂躙されてきたハンガリーの状況を風刺した戦争コメディ。IMDb では 8.6 という驚くべきハイスコアがつけられているハンガリーの国民的人気映画であるが、一般にはほとんど知られていない。