明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


このサイトはPC用に最適化されています。スマホでご覧の場合は、記事の末尾から下にメニューが表示されます。


---
神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

---

評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

カミーロ・カステロ・ブランコ『破滅の恋: ある家族の記憶』

カミーロ・カステロ・ブランコ『破滅の恋: ある家族の記憶』 (ポルトガル文学叢書) [単行本]

最近になって気づいたんだけど、これ翻訳出てたのね。カミーロ・カステロ・ブランコは、『破滅の恋』『フランシスカ』『絶望の日』の三部作でオリヴェイラが取り上げたポルトガルの作家であり、ラウール・ルイスの『ミステリーズ 運命のリスボン』の原作者としても知られる人物。

視力を失うとともに自ら命を絶ったブランコの生涯最後の日々を描いた『絶望の日』を最近ひさしぶりに見直したんだけど、いいですね。オリヴェイラとしてはマイナーな作品というべきかもしれないけれど、ドキュメンタリーとフィクションを自在に行き来するスタイルが、往々にして挿話を並べただけになりがちな題材に深い陰影を与えていて、「伝記映画」という言葉を簡単に当てはめることができないようなユニークな作品に仕上がっている。初めて見たときにも思ったが、馬車の車輪のイメージに重ねて、ブランコの手紙が読み上げられていくシーンが忘れがたい印象を残す。