カミーロ・カステロ・ブランコ『破滅の恋: ある家族の記憶』 (ポルトガル文学叢書) [単行本]
最近になって気づいたんだけど、これ翻訳出てたのね。カミーロ・カステロ・ブランコは、『破滅の恋』『フランシスカ』『絶望の日』の三部作でオリヴェイラが取り上げたポルトガルの作家であり、ラウール・ルイスの『ミステリーズ 運命のリスボン』の原作者としても知られる人物。
視力を失うとともに自ら命を絶ったブランコの生涯最後の日々を描いた『絶望の日』を最近ひさしぶりに見直したんだけど、いいですね。オリヴェイラとしてはマイナーな作品というべきかもしれないけれど、ドキュメンタリーとフィクションを自在に行き来するスタイルが、往々にして挿話を並べただけになりがちな題材に深い陰影を与えていて、「伝記映画」という言葉を簡単に当てはめることができないようなユニークな作品に仕上がっている。初めて見たときにも思ったが、馬車の車輪のイメージに重ねて、ブランコの手紙が読み上げられていくシーンが忘れがたい印象を残す。