シネロマン
キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』(The Face on the Cutting-Room Floor) 映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切…
「ラングの足は、手同様とても大きく、背筋をまっすぐ伸ばして歩く姿は軍人のようだった。試写が始まってからずっと、彼はそうしてここで外国製の粗末な煙草を吸っては投げ捨て自分の影がいくつも周囲で揺れ動くさまを眺めていた。廊下を行き来するたびに、…
SF小説、とりわけ未来世界を舞台にしたSFでいささか苦手だと思うのは、その独自の世界観に馴染むまで、というか、そこに描かれている世界を多少とも信じることができるようになるまでにどうしても時間がかかってしまうところだ。時間が逆行しているとか、…
創成期の映画が同時代の文学にどのような影響を与えたのかについては、すでにいろいろ研究されているにちがいない(ちなみに、ここで「創成期の映画」というのは、サイレント映画がその洗練を極める以前、1910年初頭あたりまでに撮られた「プリミティブ」と…
広い意味で映画をテーマにした小説を〈シネロマン〉というカテゴリーで紹介していくことにした。これまでにアップした記事の中で該当するものも、このカテゴリーに新たに分類し直してある。 −−− ホレス・マッコイ『I Should Have Stayed Home』(38) 大恐慌時…
ナサニエル・ウエスト『いなごの日』 フィッツジェラルドやフォークナーなどと同様、ハリウッドで映画の脚本を書いていたこともある*1小説家、ナサニエル・ウエストがその頃の体験をもとに書き上げた代表作『いなごの日』。意外と読んでいなかったので、時間…
"I believe that cinema was here from the beginning of the world."Josef von Sternberg Everybody say, "Is he all right?" And everybody say, "What's he like?" Everybody say, "He sure look funny." That's...Montgomery Clift, honey!The Crash "Th…
「私は自分の生まれについてほとんど何も知らない。パリで生まれたことは知っているが、母は誰かわからず、父はただひたすら女優のスナップを撮り続けていた。そして息を引き取る少し前、私が映画のキスから生まれたことを打ち明けた。」 冒頭2ページ目に現…
今年からはブログをもっとちゃんと更新しようと思っていたのだが、1月もすでに3分の2が過ぎてしまった。小ネタでいいから、今月の残り、毎日更新するつもりでやっていこう。 辻原登『寂しい丘で狩りをする』 一昨年ぐらいに、映画ファンのあいだで話題に…
Delmore Schwartz, In Dreams Begin Responsibilities and Other Stories とりあえず、表題作の "In Dreams Begin Responsibilities" を読む。自分の父と母が結婚する前(つまりは自分が生まれる前)のある日の光景を、語り手が、夢でも見るように映画館で見…