映画
ダリが描いたハーポ・マルクスの肖像 われわれが見た最初のマルクス兄弟の映画、『けだもの組合』は、私ばかりでなく、誰の眼にも、一つの異常なもの、日常的な語や映像の関係からはふつう生まれ出ない特殊な魔術を、スクリーンという手段によって解放したも…
キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』(The Face on the Cutting-Room Floor) 映画会社に勤めるキャメロン・マケイブは、完成間近の新作からある新人女優の登場シーンを全てカットするようにとの命令を受けた。その翌日、編集室で当の女優が手首を切…
『アトランティック』★★★ 『海賊のフィアンセ』★★½ 『乙女の星』★★ マティ・ディオップ『アトランティック』(Atlantique, 2019) ダカールの高層ビルの建築現場で働く青年スレイマンは、彼と同じく貧しい家の娘アーダと恋仲である。しかし、アーダには親が決…
「ラングの足は、手同様とても大きく、背筋をまっすぐ伸ばして歩く姿は軍人のようだった。試写が始まってからずっと、彼はそうしてここで外国製の粗末な煙草を吸っては投げ捨て自分の影がいくつも周囲で揺れ動くさまを眺めていた。廊下を行き来するたびに、…
SF小説、とりわけ未来世界を舞台にしたSFでいささか苦手だと思うのは、その独自の世界観に馴染むまで、というか、そこに描かれている世界を多少とも信じることができるようになるまでにどうしても時間がかかってしまうところだ。時間が逆行しているとか、…
創成期の映画が同時代の文学にどのような影響を与えたのかについては、すでにいろいろ研究されているにちがいない(ちなみに、ここで「創成期の映画」というのは、サイレント映画がその洗練を極める以前、1910年初頭あたりまでに撮られた「プリミティブ」と…
(フォート・リーの断崖の上で撮影中のパール・ホワイト) アメリカ映画が始めからハリウッドで作られていたと思っている人は多いだろう。しかし、実際は、アメリカの映画産業がハリウッドに完全に移行するのは1910年代の初めになってからであり、それまでは…
広い意味で映画をテーマにした小説を〈シネロマン〉というカテゴリーで紹介していくことにした。これまでにアップした記事の中で該当するものも、このカテゴリーに新たに分類し直してある。 −−− ホレス・マッコイ『I Should Have Stayed Home』(38) 大恐慌時…
『明日になれば他人』★★★½ 『デモンズ ’95』★★★ 『荒野の処刑』★★½ 『軍用ラッパのロマンス』★★½ 『白いトナカイ』★★ 『ユン・ピョウ in ドラ息子カンフー』★★ ヴィンセント・ミネリ『明日になれば他人』(Two Weeks in Another Town, 1962) 同じミネリの監…
ナダヴ・ラピド『幼稚園教師』★★★ テイ・ガーネット『支那海』★★ マルコム・セント・クレア『駄法螺大当り』★ ナダヴ・ラピド『幼稚園教師』(Haganenet, 2014) イスラエルの監督ナダヴ・ラピドの『ポリスマン』に続く長編劇映画第2作目。 テルアビブの幼稚園…
ヤン・トロエル『これが君の人生だ』 ★★½ ウィリアム・ウェルマン『人生の乞食』★★½ ジョセフ・ロージー『暴力の街』★★ フランク・タトル『百貨店』★½ エドワード・サザーランド『チョビ髯大将』★ カルロス・サウラ『従妹アンヘリカ』★ ヤン・トロエル『これ…
ナンニ・ロイ『祖国は誰のものぞ』(Le quattro giornate di Napoli, 1962) ★★★ 第二次世界大戦中、ナチスに占領されていたナポリ市民たちの4日間の蜂起を描いた戦争映画。放題は素直に「ナポリの4日間」でよかったのではないだろうか。 主役であってもおか…
ダリル・デューク『サイレント・パートナー』★★½ 冴えない銀行の金銭出納係(エリオット・グールド)が、自分の銀行で強盗が行われることを偶然に知ってしまう。男はあらかじめ大金をバッグのなかに隠しておき、わずかに残しておいた金だけを強盗に手渡す。…
Dinu Cocea『無法者たち』(Haiducii, 1966) ★★ これも『ヴラド・ツェペシュ』と同じくワラキアを舞台にしたルーマニア映画。描かれる時代は『ヴラド・ツェペシュ』と違って18世紀だが、やはり国はオスマントルコ帝国の存在に苦しめられている。そこに、サル…
なかなか書いている余裕がなくて、全然まともに更新できてない。ただのメモだけれど、 とりあえず穴埋め的に、最近見たいくつかの映画について少しばかり書いておく。 ーーー 『イメージの本』★★★ 『幸福なラザロ』★★★ 『ハイ・ライフ』★★½ 『ハロウィン』★★…
神戸映画資料館でのハワード・ホークス特集の宣伝がてらにツイッターでつぶやいていた「ハワード・ホークス讃」を、いくらか書き足した上でまとめました。 ホークスが持っているコメディのタイミングの才能は、他の追随を許さない。[…]『ヒズ・ガール・フ…
『モアナ 南海の歓喜 サウンド版』(Moana, ロバート・フラハティ, 1926) ★★★ 『極北のナヌーク』でフラハティは、当時すでに銃を用いていたイヌイットに、あえて銛を使って狩りをさせた。ドキュメンタリー映画の歴史はこの〈嘘〉とともに始まる。『アラン』…
『無防備都市』(ロベルト・ロッセリーニ)★★★★ 『サスペリア』(ダリオ・アルジェント)★★★ 『愛と怒り』(ベルトルッチ、ベロッキオ、パゾリーニ、ゴダールほか)★★½ 『ルナ』(ベルナルド・ベルトルッチ)★★½ 『夜を殺した女』(Le lieu du crime, アンド…
別に忙しかったわけでもないのだが、あまり書く気になれなかったのでしばらく更新できていなかった。最近見て印象に残った映画についてメモ書き程度に記しておく。 オーソン・ウェルズ『風の向こう側』★★★内田吐夢『警察官』(1933) ★★★三宅唱『きみの鳥はう…
ジョージ・キューカー『わが息子、エドワード』(Edward, my son, 1949) ★★★デヴィッド・ロバート・ミッチェル『アンダー・ザ・シルバーレイク』(Under the Silverlake) ★★½ヴァレリー・ドンゼッリ『禁断のエチュード マルグリットとジュリアン』(Marguerite …
ゾルタン・ファーブリ『第五の封印』(Az ötödik pecsét, 1976) ★★½ 監督のゾルタン・ファーブリ(ハンガリー風に言うならば「ファーブリ・ゾルタン」)の名前も、この映画のことも、日本ではほとんど知られていないが、ハンガリー映画史に残る傑作と言われる…
今週末に迫った神戸映画資料館の講座の準備で、いよいよ余裕がなくなってきた。コメントを書いている時間もないので、とりあえず最近見て印象に残ったタイトルだけを並べておく。 ベルナルド・ベルトルッチ『暗殺のオペラ』(Strategia del ragno, 1970) ★★★½…
ハーバード・J・バイバーマン『地の塩』(Salt of the Earth, 1953) ★★マーク・ロブソン『青春物語』(Peyton Place, 1957) ★½ジュリアン・デュヴィヴィエ『地の果てを行く』(La bandera, 1935) ★½ マーク・ロブソン『青春物語』は、アメリカではファミリー・…
神戸映画資料館の連続講座が目前に迫ってきたので、なかなか更新している余裕が無い。とりあえず、最近見た中で印象に残った映画を列挙しておく。 バート・レイノルズ『シャーキーズ・マシーン』(1981) ★★★ベルトラン・ボネロ『ノクチュラマ』(Nocturama) ★★…
ウィリアム・ディターレ『ラブレター』(Love Letters, 1944) ★★★ 一般にはそこまで評価が高い作品ではない。星の数にはわたしの個人的な思い入れが多分に入っている。なぜだかうまく説明できないのだが、わたしはこの映画がとても好きなのだ。 「ラブレター…
イングマール・ベルイマン『愛のさすらい』(The Touch, 1971) ★★ アントニオーニに寄せたような邦題よりも原題の「ザ・タッチ」 のほうが馴染みがある。一度も見る機会がなく長らく気になっていたベルイマン作品のひとつ。『狼の時刻』や『恥』のように今ま…
リカルド・フレーダ『神秘の騎士』 (Il cavaliere misterioso, 1948) ★★★ 18世紀のイタリアを舞台にジャコモ・カサノヴァが活躍する冒険活劇。『Don Cesare di Bazan』(42)、『Aquila nera』(46) につづいてリカルド・フレーダが撮ったコスチューム・プレイ…
わたしが見ることができたハンス・シュタインホフの映画は結局3本だけだが、この監督には確かな演出力があることが確認できた。彼が映画を撮ったのがたまたま(本当にたまたまなのか?)ナチス・ドイツでなかったならば、ひょっとしたら今頃は巨匠として名…
ハンス・シュタインホフ『ヒトラー青年』(Hitlerjunge Quex, 1933) ★★★ ヘルベルト・ノルクスという名前を聞いてすぐに誰だか分かる人は、ドイツ史の専門家でもない限りそう多くはないだろう。1932年1月24日、ベルリンで、いわゆるヒトラーユーゲント(ナチ…
ジガ・ヴェルトフ『カメラを持った男』 マン・レイ『エマク・バキア』 ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』 フェルナン・レジェ『バレエ・メカニック』 ジャン・コクトー『詩人の血』 ケネス・アンガー『我が悪魔の兄弟の呪文』 ポール・シャリッツ『T,O…