明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。





























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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

映画

アンドレ・バザンによるクリス・マルケル『シベリアからの手紙』評

アンドレ・バザンがクリス・マルケルの初期ドキュメンタリー作品『シベリアからの手紙』(58) について書いた文章。フランス語の原文が手に入らなかったので、英語からの重訳である。 (今日は、とりあえず急いで訳しただけなので、細かいチェックは明日にな…

ジョン・M・スタール『裏町』――メロドラマの輝き

ジョン・M・スタール『裏町』(Back Street, 32) ★★★ メロドラマとは不思議なものだ。 メロドラマとは一体何なのか。考え始めるとわからなくなる。しかしそれは西部劇であっても、フィルム・ノワールであってもホラーであっても同じだ。どんなジャンルでも突…

ラリー・コーエン『スペシャル・イフェクツ/謎の映像殺人』

ラリー・コーエン『スペシャル・イフェクツ/謎の映像殺人』 (Special Effects, 84) ★½「スペシャル・エフェクト」というタイトルでサスペンスとなると、『F/X 引き裂かれたトリック』のような作品をちょっと想像してしまうが、ぜんぜん違う。原題も邦題…

ジョン・フォード賛

6月24日に神戸映画資料館で行う予定の「連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見 第2回 ジョン・フォードと西部劇の神話──『駅馬車』をめぐって」(タイトルはいつものように適当につけたもので、実際の内容はちょっと違うものになると思います)が、あと一週間と…

アルトゥール・ロビソン『戦く影』――影と鏡の戯れ

アルトゥール・ロビソン『戦く影』(Schatten - Eine nächtliche Halluzination, 23) ★★★ 「『今宵かぎりは』のダニエル・シュミットがこの映画のリメイクを撮ってくれないものかと思う。シュミットなら必ずやこの作品をより豊かなものにし、再発見させてくれ…

『市民ケーン』余話――コウルリッジの夢とディケンズの謎

オーソン・ウェルズの『市民ケーン』でケーンが自分のために建て、最後に、そのなかで孤独に死んでゆく城の名前「ザナドゥ」が、イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コウルリッジによって書かれた叙事詩「クブラ・カーン」Kubla Khan のなかに登場する土地…

『市民ケーン』劇場その6――ガラス玉遊戯

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 サム・ウッド『恋愛手帖』 "snowglobe" と呼ばれる雪の降るガラス玉は19世紀にはすでにヨーロッパで知られていた。それがアメリカに伝わっ…

『市民ケーン』劇場その5――ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』(41) "It's a picture about a picture Hellzapoppin." 映画のなかの登場人物が映写技師に向かっ…

『市民ケーン』劇場その4――アニメ「ザ・シンプソンズ」と『市民ケーン』

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 89年にアメリカのFOXテレビで放送開始されるアニメ「ザ・シンプソンズ」でも『市民ケーン』は何度もパロディにされてきた。シュルツの漫画に…

『市民ケーン』劇場その3――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その3

4月8日 神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」 1984年9月2日スヌーピーが Pawpet Theater で『市民ケーン』のパロディ(?)『市民ビーグル』を演じる。すべてを手に入れた男が、すべてを失う。失…

『市民ケーン』劇場その2――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その2

4月8日 神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」 1972年10月29日73年12月9日のエピソード同様に、このエピソードでも、70年代はじめには『市民ケーン』は普通にテレビで見られるようになっていたこと…

『市民ケーン』劇場その1――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その1

神戸映画資料館でやることになっている連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」の期日が迫ってきたので、正直、ブログを更新している余裕が全然なくなってきた。というわけで、宣伝も兼ねて、当日に話す内容とはあん…

アンドレイ・ウジカ『ニコラエ・チャウシェスクの自伝』――プロパガンダ映像によるアンチ・プロパガンダ

アンドレイ・ウジカ『ニコラエ・チャウシェスクの自伝』 (Autobiografia lui Nicolae Ceausescu, 2010) ★★★ 「民衆とは、まず画面の切り取り方なのだ。カメラが切り取る長方形の画面がある、そしてこの画面のなかに、沢山の人々がいる。それで十分だ。[…]そ…

ダグラス・トランブル『ブレインストーム』

ダグラス・トランブル『ブレインストーム』(83) ★★ 「いつの日か、映画を作る必要さえなくなるだろう。観客は頭部に電極を埋め込まれ、こっちでどれかのボタンを押すだけで、「おお」とか「ああ」とか言って、驚いたり笑ったりしてくれるようになるんだ。す…

G・W・パプスト『財宝』――パブストが撮ったただ一つの表現主義映画

明けましておめでとうございます(今年になって、この言葉を初めて口にした、というか書いた)。今年も、昨年同様、のんびりとやってゆきます。 G・W・パプスト『財宝』(Der Schatz, 23) ★★パプストのデビュー作であり、彼の最初にして最後の真に表現主義…

テレンス・デイヴィス『Of Time and the City』――Listen to Liverpool

テレンス・デイヴィス『Of Time and the City』(2008) ★★★ 「われわれは自分が憎んでいる場所を愛し、そして愛している場所を憎む。愛している場所を去り、そして人生を費やしてその場所を取り戻そうとする」冒頭、監督のテレンス・デイヴィス自身の声によっ…

エリック・ロメール『クロイツェル・ソナタ』

エリック・ロメール『クロイツェル・ソナタ』(56) ★★ レフ・トルストイの原作を習作時代のロメールが映画化した短編。ロメールは監督・脚本のみならず、主演もつとめている。製作担当のゴダールが、ロメールの知人役で出演しているのも見逃せない。クレジッ…

ジョゼフ・ロージー『The Gypsy and the Gentleman』

べつに忙しかったわけではないのだが、なんだか何もやる気が起きず、すっかりブログの方もご無沙汰している。そろそろ更新しようと思う。しかし、長いものはかけそうにないので、まずは短い記事から。 ジョゼフ・ロージー『The Gypsy and the Gentleman』(58…

マリオ・カメリーニの30年代についての覚書――ファシズムの時代のカーニヴァル的コメディ

たかだか10本ほどしか見ていないのに断言するのもなんだが、やはりカメリーニの30年代作品は格別だ。それは、30年代に撮られた『Il cappello a tre punte』(35) とそのリメイクである『バストで勝負』(55) を見比べてみれば歴然としている。『Il cappe…

ラウル・ルイス『盗まれた絵の仮説』——幻惑する2人の語り手

ラウル・ルイス『盗まれた絵の仮説』★★★½ ピエール・クロソウスキーの奇々怪々な小説『バフォメット』に基づいて、というよりは、この本に緩やかにインスパイアされて作られた映画で、ルイスの名を世に知らしめた初期の代表作である。ずいぶん久しぶりに見直…

ジョージ・キューカー『結婚種族』——キューカー恐るべし

「コメディはまず滑稽でなくてはいけないが、それを一段高いものにするには、人間性が必要になってくる。だからコメディとして成功したものはすべて悲劇としても成功するし、その逆もまた真なのだ」(ジョージ・キューカー) ジョージ・キューカー『結婚種族…

ブライアン・デ・パルマ『レイジング・ケイン』再見メモ

ブライアン・デ・パルマ『レイジング・ケイン』★★ この映画を最初に見たのは、たしか当時たまたま2ヶ月ほど住んでいたトゥールの映画館のフランス語吹き替え版だった*1。わけがわからない映画に見えたのは、自分の語学力のなさのせいだと思っていたのだが、…

エロール・モリス『The Thin Blue Line』——フィルム・ノワールに限りなく接近するポストモダン的(?)ドキュメンタリー映画の傑作

「『路上での偶然の出会いの物語』とモリスの呼ぶこの見事に様式化されたドキュメンタリーは、エドガー・G・ウルマーの『恐怖のまわり道』のように容赦のないほど運命論的であり、『ブロンドの殺人者』の夢のシークエンスのように奇妙に芸術的であり、『過去…

ウィリアム・ディターレ『科学者の道』――「伝記映画」についての覚書

ウィリアム・ディターレ『科学者の道』(The Story of Louis Pasteur, 36) ★★ 「『伝記映画』なんてジャンルがあるのだろうか。そりゃあ、個々別々の『伝記映画』なるものは数限りなくあるだろう。しかし、『伝記映画』というカテゴリーがかつて存在したとい…

ヴェラ・ヒティロヴァ『O necem jinem』——平行線は交わらない

ヴェラ・ヒティロヴァ『O necem jinem』(Something Different, 63) ★★ 『ひなぎく』で(というか、この一作のみを通じて)日本でも有名なチェコの女性映画監督ヴェラ・ヒティロヴァの長編デビュー作。チェコ語は全くわからないが、英題・仏題から推測するに…

エリック・ロメール『聖杯伝説』――ブレヒトによって演出されたバスター・キートン?

エリック・ロメール『聖杯伝説』(Perceval le gallois, 78) ★★★ クレティアン・ド・トロワによって12世紀末に書かれた未完の宮廷騎士物語『ペルスヴァル(パルシファル)、あるいは聖杯伝説』を、エリック・ロメールが非常に様式的なスタイルで映画化した…

『地球爆破計画』『アンドロメダ…』――70年代SF映画の2つの古典

SF映画を2本。どちらも地味な作品だが、SF映画史に残る古典である。 ジョゼフ・サージェント『地球爆破計画』(Colossus: The Forbin Project, 70) ★½ "I think Frankenstein ought to be required reading for all scientists." (Colossus: The Forbin Proj…

シャルナス・バルタスについての覚書——Reminiscences of a Journey to Lithuania

シャルナス・バルタス*1についてはこれまでにも何度か名前を出したことはあるが、ちゃんと紹介したことはなかったので、簡単にまとめておく。 1964年、リトアニアに生まれる。ソ連邦がまさに崩壊の危機を迎えつつあり、当時まだリトアニア・ソビエト社会…

ノエル・ブラック『やさしい毒草』

小さい時にテレビで見た映画のなかには、タイトルも、だれが出ていたかも全く思い出せないが、いつまでも記憶に焼き付いて忘れられない作品がある。物語の詳細はほとんど忘れてしまっているのに、ある細部だけが強烈に記憶に残っていて、その細部が何度も繰…

W・C・フィールズについての覚書1——『進めオリンピック』

「2,3年前私は、個人的な楽しみとしてもう一度見たい映画は何か、と大学生たちに聞かれたことがある。私はためらうことなく『我輩はカモである』と『進めオリンピック』だと答えたが、その2本の映画がまさか関連があるとは知らなかった。しかし、それら2…