明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

2009-01-01から1年間の記事一覧

ダグラス・サークのドイツ時代ほか

DVD

アピチャットポン・ウィラーセタクンの『ブリスフリー・ユアーズ』でカーラジオから流れてくる、マルコス・ヴァレ作曲によるボサノバ「Summer Samba」を女性歌手がタイ語で歌ったヴァージョンがCDになっていないものかと調べてみたのだが、どうもそういう…

フィリピン・コネクション〜ヘルマンからブロッカへ

モンテ・ヘルマンのおよそ20年ぶりとなる長編劇映画の新作が、まもなく公開されようとしている(日本公開は未定。というか、まだポスト・プロダクションの段階と思われ、完成しているかどうかも定かでない)。タイトルは、「Road to Nowhere」。泣かせるタイ…

キューバ・リブレ〜『ある官僚の死』『12の椅子』

トマス・グティエレス・アレア『ある官僚の死』(66) この作品については、一度紹介しようと思ったことがあったのだが、さして興味を引きそうにもなかったので、書く前にボツにしてしまっていた。日本ではほとんど見る機会がないし、海外の DVD をわざわざ…

シドニー・ギリアット『青の恐怖』

シドニー・ギリアット『青の恐怖』Green for Danger ヒッチコックの『バルカン超特急』などの脚本家としてのほうが有名なイギリスの映画監督、シドニー・ギリアットによるミステリー映画。『絶壁の彼方に』という映画が結構気に入っていたのだが、他の作品は…

芝居をせんとや生れけむ〜『二重生活』『Shakespeare-Wallah』

ジョージ・キューカー『二重生活』A Double Life 40年代末から50年代末にかけてキューカーは、ガーソン・ケニンとルース・ゴードン夫妻の脚本をもとに、『アダム氏とマダム』、『ボーン・イエスタディ』、『有名になる方法教えます』をはじめとする傑作…

小島信夫『美濃』、スコリモフスキ『早春』のことなど

『アンナと過ごした4日間』を見に行ったついでに、京都駅前のビルにあるジュンク堂にデ・フォレの『おしゃべり、子供部屋』を買いに行く。このあたりではいちばん大きな本屋なのだが、置いていない。まあ、こんなものか。さすがに平積みはしてないだろうと…

新作DVD〜『カール・Th・ドライヤー コレクション ゲアトルーズ 』ほか

DVD

すべて紀伊国屋から。 『カール・Th・ドライヤー コレクション ゲアトルーズ 』 来年の話です。個人的には、もっとマイナーな作品を出してほしいところだが、この先に期待。 『イジー・メンツェル DVD-BOX』 カルロス・サウラ『カラスの飼育 HDニューマスタ…

ルイ・ルネ・デ・フォレ『おしゃべり,子供部屋』

ルイ・ルネ・デ・フォレ『おしゃべり,子供部屋』 少し前に再販されてました。これには正直、ちょっと驚きましたね。私が大学に入ったころには、この本はすでに絶版になっていて、その後一度も再版されたことはないと思います。図書館にはもちろん入ってまし…

『Jacques Doillon : coffret 7 DVD』ほか

DVD

マルセル・レルビエ『Coffret Marcel L'herbier : Eldorado ; L'homme du large』 ジョン・ヒューストン『ファット・シティ』 リチャード・フライシャー『The Clay Pigeon』 手元にあるフランスの映画ガイドには "Série B intéressante seulement par la sig…

『アナタハン』『静かなるアメリカ人』ほか

DVD

久しぶりに Amazon.fr の DVD をチェックしたら、気になるものがたくさんあった。ありすぎたので、何度かにわけて紹介しようと思う。 ヘンリー・ハサウェイ『Ames a la mer』 フリッツ・ラング『リリオム』Liliom フランス時代のフリッツ・ラング。 マリオ・…

新作DVD〜『決斗!一対三』『クィーン・ケリー クリティカル・エディション 』ほか

DVD

1年以上前にこのブログでハマー・プロの映画について記事を書いたとき、戯れに「かいぶつたちのいるところ」というタイトルをつけた。言うまでもなく、モーリス・センダックの有名な絵本のタイトルをもじったのだが、わかる人にはわかるだろうし、わからな…

ロベルト・ボラーニョ『通話』

ロベルト・ボラーニョ『通話』 あんまり評判がいいので買ってしまった。今年の6月に翻訳が出て話題になったチリの作家、ロベルト・ボラーニョの短編小説集だ。全部で14の短編が収められている。なかにはピンとこないものもあったが、どれもなかなか面白い。…

No Country for Old Men〜デイヴィッド・ミラー『脱獄』

デイヴィッド・ミラー『脱獄』Lonely are the Brave (62) デイヴィッド・ミラーという監督は、日本では『ダラスの熱い日』が多少とも知られているだけで、さして評価が高いわけではない。アメリカ本国でも、オリジナリティーに欠ける凡庸な監督というのが、…

『The Sam Fuller Film Collection 』ほか

DVD

米版の新作 DVD。気づいたものだけ。 『Columbia Pictures Film Noir Classics, Vol. 1 』 (The Big Heat / 5 Against the House / The Lineup / Murder by Contract / The Sniper) ドン・シーゲルの『殺人捜査線』、アーヴィング・ラーナーの『契約殺人』な…

アンジェイ・ムンク『やぶにらみの幸福』

たまたまアンジェイ・ムンクの映画を何本か DVD で見、ついでに、ちょっと前に衛星放送で録画したまま放っておいたワイダの『世代』をようやく鑑賞し、1年以上前に買っておいたスコリモフスキーの『Moontlighting』の DVD をやっと開封し、ポーランド映画の…

新作DVD〜『ざくろの色 プレミアム・エディション』『ミネソタ大強盗団』

DVD

庄野潤三氏が亡くなりました。『プールサイド小景』を学生の頃読んですごいインパクトを受けたことを思い出します。『アメリカン・スクール』の小島信夫とかと並んで、一時期、わたしにとってとても重要な作家でした。 ☆ ☆ ☆ ルイス・ブニュエル『のんき大将…

リチャード・T・へフロン『未来世界』

余裕ないです。更新してなかったわりには、アンテナ登録者数が微増している(まあ、すぐ減ると思うけど)。ちゃんと書いてる時間がないので、どうでもいい話題を1つ。 ☆ ☆ ☆ リチャード・T・へフロン『未来世界』 カルトSF映画『ウエストワールド』のあま…

ボルヘスと映画〜ウーゴ・サンチャゴ『侵入』

大阪プラネットで上映するジョン・フォード作品の字幕作りをしているので、ブログを更新している暇がなかった。とりあえず『最後の歓呼』の字幕は完成。あと1本やらないといけないが、いったん休憩だ。そのあいだにチャチャッと一つ何か書いておく。 ☆ ☆ ☆ …

新作DVD〜『アストレとセラドン 我が至上の愛』『果てなき船路』など

DVD

大統領選挙後の混乱のイラクから遠く離れたイタリアで、アッバス・キアロスタミがジュリエット・ビノシュ主演の映画を撮っているという話を聞いたときは驚いたが、今は一刻も早く見たくてしようがない。 さて、約1ヶ月ぶりに、日本の新作 DVD を紹介する。…

ロジャー・コーマン『フランケンシュタイン/禁断の時空』

ロジャー・コーマン『フランケンシュタイン/禁断の時空』 (Frankenstein Unbound, 90, 未) まじめな映画の話がつづいたので、この辺りでくだらない方向に振り子を戻しておかなければ。そう思って、いい話題を探していたら見つかった。ロジャー・コーマンの…

いくつかの近作についての短い覚書3〜ベーラ・タル『倫敦から来た男』

ベーラ・タル『倫敦から来た男』(The Man from London) タル・ベーラことベーラ・タルが、ジョルジュ・シムノンの小説を映画化した新作。夜の波止場。水面をとらえていたキャメラが、港に泊められていた船の船首にそってゆっくりと上昇してゆく。デッキにた…

『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』のことなど

お盆休みなのでどうでもいい話題を。 Allcinema Online のいい加減さは前にも書いたが、間違いはいっこうに減る気配がない。最近見つけた間違いをいくつか挙げておく。 ジャン・ルノワール『The Land Is Mine』→『This Land Is Mine』 『来るべき世界』(THIN…

フリッツ・ラング(?)の『Moontide』

ボツにしようと思った記事だが、他に書くこともないのでアップしておく。 ☆ ☆ ☆ 『脅迫者』の DVD が出た。監督名はブリテイン・ウィンダストとなっているが、これがウォルシュ作品であることはだれもが知っている。これもむかしパリの映画館で見た。ふつう…

西部劇を中心に〜『Wichita』『The Last Hunt』ほか

DVD

ジャック・ターナー『Wichita』(『法律なき町』) ターナーが撮った5本あまりの西部劇のなかでおそらくもっとも有名な一本。簡単にいうと、OK牧場の決闘以前のワイアット・アープの物語だ。わたしがいちばん驚いたのは、ワイアット・アープを演じるジョ…

Mの系譜〜『Der Verlorene』『Nachts, wenn der Teufel Kan』

ピーター・ローレ『Der Verlorene』(51) 以前、このブログで名前だけ出したことがあったが、内容にはふれなかった。この先、適当なタイミングがくるとも思えないので、この辺で紹介しておく。ピーター・ローレ唯一の監督作品である。ローレはナチを逃れて渡…

『踊る海賊』『月蒼くして』ほか

DVD

パゾリーニとルノワールに関しては、すでに出ていたもののバラ売りか、パッケージを変えただけのもののようだ。 ヴィンセント・ミネリ『踊る海賊』 パイレーツ・オブ・カリビアンの物語──、といっても、海も海賊船も出てこない。ヒロインの夢のなかに存在す…

いくつかの近作についての短い覚書2〜『Bamako』

アブデラマン・シサコAbderrahmane Sissako『Bamako』 フランス映画『De la guerre』に続いて、アフリカ映画『Bamako』を紹介する。2006年の作品なので少し古いが、いまだに未公開だ(公開される可能性は低いだろう)。アフリカ映画祭などのかたちでは上映さ…

いくつかの近作についての短い覚書1〜ベルトラン・ボネロ『De la guerre』

3作ほどまとめて書くつもりだったが、「短い覚書」としたわりには長くなってしまったので、いくつかに分けてアップすることにした。まずはフランス映画『De la guerre』から。 ベルトラン・ボネロ『De la guerre』 変な映画である。マチュー・アマルリック…

映画の映画〜『ベリッシマ』『Le schpountz』『底抜け便利屋小僧』

訳あってしばらくなにも書く気にならなかった。今もそうなのだが、だいぶブランクがあいてしまったので、下書き保存しておいた記事を適当に仕上げてアップしておく。 ☆ ☆ ☆ 映画をテーマにした映画、というよりも撮影所を舞台にした映画は少なくない。その中…

清水宏『簪』

清水宏『簪』 林道を歩く団体旅行客をトラックバックで撮ったファースト・シーンから、何か新鮮きわまりない風が吹いている。キャメラの位置はこんなに遠くでいいんだろうか。どことなく素人っぽいといえなくもない画面の連続に、初めて見るような感覚に襲わ…