明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』のことなど


お盆休みなのでどうでもいい話題を。


Allcinema Online のいい加減さは前にも書いたが、間違いはいっこうに減る気配がない。

最近見つけた間違いをいくつか挙げておく。




ジャン・ルノワール『The Land Is Mine』→『This Land Is Mine』

『来るべき世界』(THINGS'TO COME) →『Things to Come』

(この手の間違いは無数にあるので、いちいち挙げていたらきりがない。)





三里塚 若山に鉄塔が出来た』:「若山」というのがありそうでないのが絶妙。


とどめの一発』原作マルゲリーテ・ユルネカール:三島由紀夫とも縁の深い女性作家なんだけどねぇ。

(「若山」はたぶん漢字を読み間違えたんだと思うが、こちらはどうやったらこんなふうに間違えることができるのか、担当者に聞いてみたくなる。綴りを読み間違えたにしては凄まじすぎるぞ。)




『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』:撮影スヴェン・ニクヴィストとあるが、IMDb では撮影監督は Jost Vacano となっている。『ドイツ・ニューシネマを読む』でも、この映画の撮影は、ヨースト・ヴァカノとディートリッヒ・ローマンが担当したことになっており、ディートリッヒ・ローマンは途中で離脱したとある。ニクヴィストの名前はどこにも出てこない。ネットでざっと調べてみたが、この映画にニクヴィストが関わった様子はなさそうだった。たとえあったとしても、「ニクヴィストもいい仕事をしている」と書かれるほど中心的な役割を果たしたとは思えない。Criterion から出ているこの映画の DVD のインタビューでも、ヨースト・ヴァカノは自分ひとりで撮ったかのように語っていて、ニクヴィストの名前は一言も出てこない。

(『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』は、フォルカー・シュレンドルフマルガレーテ・フォン・トロッタが夫婦で撮った映画で、犯罪者と一夜をともにした堅物の女が、警察権力とマスコミによって、いわれなき迫害を受けていく姿を描いている。シュレーンドルフとトロッタが組んだところでたいした映画になるはずもない。しかし、ドイツで大ヒットしただけあって、それなりに楽しめる作品にはなっている。当時の西ドイツの左翼テロ・アレルギーを背景に、マスコミによる言葉の暴力が描かれてゆくのだが、その描き方はそれこそテレビ的でわかりやすく、ストローブ=ユイレの『妥協せざる人々』と同じ原作者の作品とはとても思えない。むしろ、そのあからさまな表向きのテーマの部分よりも、ヒロインを政治とは無縁のところで突き動かしていく妄執のほうに、わたしは興味を引かれた。余談だが、Criterion の DVD にはハインリッヒ・ベルのインタビューが収録されている。これがなかなか面白い。)

「若山」や「マルゲリーテ・ユルネカール」なら、ごく普通の一般教養や映画の知識がある人ならすぐに間違いに気づくだろうが、この場合は、わたしのように用心深い人間でなければ、ニクヴィストの名前を聞いてすぐわかる映画通でも、すぐに信じてしまうだろう。


スタンリー・クレイマーの凡作『渚にて』を「必見」と書くぐらいは、個人的な意見の範疇なので大目に見てもいいが、事実関係についてだけはちゃんと調べて書いてほしいものだ。


それにしても、このサイトは、どういう情報ソースを元にデータベースを構築しているのか。わたしがざっと見ただけでも、これだけの間違いがすぐ見つかるのだから、他にどれだけあるか計り知れない。内部からの自浄作用だけではどうにもならないだろう。サイトを訪れた人たちから、データベースの誤謬についての情報を広く募集するというやり方でもとらなければ、つまらない間違いはいっこうに減らないに違いない。もうちょっと何とかならないものか。しかし、前にも書いたが、このサイトはあまりそういうことは歓迎していないような気もするのだ。