明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

日本映画

沢島忠『間諜』

沢島忠『間諜』(64) ★★ なんというか、単純に面白かったですね。ベテラン監督沢島忠による時代劇なんですが、タイトルからもわかるようにスパイ映画でもある、そういうちょっと変わった作品です。 1964年の作品だから、東映がいわゆる集団時代劇によって新風…

清水宏『都会の横顔』

清水宏『都会の横顔』(53) ★½ 清水宏のフィルモグラフィーにおいてはかなり晩年に作られた作品である。全盛期と比べると落ちるといわれたりもする50年代の作品だが、『都会の横顔』にはいかにも清水宏らしい部分が多々あって、なかなかに興味深い。 路面電車…

〈言葉〉を撮るドキュメンタリー──濱口竜介・酒井耕の東北三部作について

6月29日より始まる「濱口竜介プロスペクティヴ in Kansai」に多少とも協力していまして、神戸映画資料館のホームページに、「〈言葉〉を撮るドキュメンタリー──濱口竜介・酒井耕の東北三部作について」という文書を書かせて頂きました。東日本大震災後に…

マキノ正博『幽霊曉に死す』

前日、ペドロ・コスタの『コロッサル・ユース』を見に行ったばかりで疲れていたが、「第六回京都映画祭」で上映されるマキノ正博(マキノ雅弘)の『幽霊暁に死す』を見に、祇園会館に向かう。二日連続で映画を見に行くのはずいぶん久しぶりだ。いつ以来だろ…

福田克彦『草とり草紙』覚書

シドニー・ポラックが死去。とりわけ愛した監督でもなかったが、ベルギー戦線を背景にした奇妙な戦争映画『大反撃』などがいまは記憶に残っている。 ☆☆☆ 神戸映画資料館に福田克彦の『草とり草紙』を見に行く。ここは去年に自主上映活動をはじめたばかりの映…

石田民三『花火の街』

パソコンの前の椅子にネコが居座ってしまったので、しばらく更新できなかった。まあ、別に書くこともなかったのだが。 京都文化博物館に石田民三の『花火の街』を見に行ってきたので、だらだらと感想をつづっておく。 石田民三『花火の街』 1937年(昭和12年…

黒沢清『叫』

『叫』ホラー・ノワール。役所広司演じる刑事は、不可解な連続殺人の現場に、犯人が自分であることを指し示す証拠物を見つけてとまどう。まるで自分の影を追っているような不気味さ。どんよりとのしかかってくるいわれない罪の意識。役所広司は赤いドレスを…

成瀬巳喜男『稲妻』覚書(ただのメモです)

成瀬巳喜男『稲妻』★★★☆ジャコメッティ展を見に行った兵庫県立美術館で成瀬の『稲妻』を見る。こんなところで映画の上映をしているとは知らなかった。もっとも、知っていても気軽にいける距離ではないが。入場料500円だったのでひょっとしてビデオ上映ではな…

西川美和『ゆれる』

西川美和『ゆれる』★★☆サスペンスという言葉の原義が「宙づり」であるとするならば、渓谷にかかった不安定な吊り橋のなかほどで起きた事件の真相を、文字通り宙づりにすることで物語を成立させているこの映画は、サスペンスという言葉の意味にこの上なく忠実…

足立正生『略称・連続射殺魔』など

足立正生『略称 連続射殺魔』★★★1968年に起きた19才の少年永山則夫による連続射殺事件に衝撃を受けた足立正生が、松田政男、佐々木守らとともに、事件の直後に撮り上げたドキュメンタリー。とはいえ、ここには永山則夫を知るものを取材したインタビューもな…

転換期のエネルギー〜藤田敏八『修羅雪姫』

あまり書いている時間がないので、メモふうに(ぜんぜんまとまってません)。藤田敏八『修羅雪姫』★★☆山根貞男は、72年以降に、東宝のスクリーンに「異種の血」が大量に流れ込んでくることを指摘している。「異種の血」とは、要するに、非東宝のスターや監督…

成瀬巳喜男『君と別れて』『夜ごとの夢』

成瀬巳喜男『君と別れて』(33)★★★ 『夜ごとの夢』(33)★★★ 同志社大学 寒梅館ハーディホールにて。『君と別れて』は成瀬のサイレント時代の代表作に数えられる作品。松竹蒲田の撮影所長の城戸四郎に「小津は二人いらない」といわれたのはこの前年。逆に、…

安藤尋『今、海はあなたの左手にある』

人の気配がなく、動くもののない、写真のような風景と風景のような写真が、絶えずパン移動するキャメラの運動とともに、だまし絵的にモンタージュされてゆく。マルグリット・デュラスの『大西洋の男』のテキストがバラバラに解体されたかたちで朗読される。…

青山真治『すでに老いた彼女のすべてについて語らぬために』

昨日は、ジャン=ミシェル・フロドンの文章の日本語訳を半分まで読んだ時点で書いたのだが、後半の訳もぐだぐだだった。それでも、『フィルム・ノワールの時代』の細川晋の訳よりは全然ましだったが・・・(サイト「映画の誘惑」を参照)。ま、こんな話を続…

衣笠貞之助『狂った一頁』『十字路』

京都市立博物館にて。最も有名な日本のサイレント映画。実は、今回見るのが初めて。たしかに、瞬間瞬間すごいイメージがあるのだけれど、全体的に見るとどちらも結構退屈な映画だった。ま、結局、お話はどちらも古くさい新派のそれなのだ。両作品とも、雨の…

並木鏡太郎『樋口一葉』(39)

京都市立博物館に並木鏡太郎の『樋口一葉』を見に行く。ふだんは入場券を買いさえすれば入れるのだが、今回は特別企画なので、あらかじめはがきを持っている人だけしか入れないと受付でいわれる。しかし、上映開始ぎりぎりになってまだ空席があれば見られる…

瀬々敬久『肌の時間』

まるでダメだった。あいかわらず全編に流れる水のイメージ。『課外授業 暴行』のころがいちばんよかったね。

豊田四郎『雪国』

OS劇場のモーニングで上映される豊田四郎の『雪国』を見に大阪に向かう。電車の通路に吊革につかまって立ってると、窓ガラスに女性が正面を向いている姿が映っているので、横を見たらだれもいなかった。後ろを振り向くと、こちらに背中を向けた女性が立っ…

鈴木英夫『非情都市』

わたしが見た鈴木英夫作品の中ではこれが一番面白かった。スクープを取るためには恋人さえも犠牲にする事件記者(三橋達也)が、結局自分も社会の歯車の一つとして押しつぶされてゆく様を描く。自分の書いた記事で人が死のうがどうしようが意に介さない憎々…