明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

鈴木英夫『非情都市』


わたしが見た鈴木英夫作品の中ではこれが一番面白かった。スクープを取るためには恋人さえも犠牲にする事件記者(三橋達也)が、結局自分も社会の歯車の一つとして押しつぶされてゆく様を描く。自分の書いた記事で人が死のうがどうしようが意に介さない憎々しげな新聞記者が、それよりも非情な社会の仕組みによって、最後は犠牲者となる。この憎悪をかき立てると同時に、哀れをも催す野心家の記者を三橋達也が見事に演じている。この作品で鈴木英夫を少しは見直したが、やはり作家主義によって「作家」にされてしまったひとりという印象は変わらない。取り立てていうほどの個性も文体もない職人監督という気がする。しいていうなら、この映画の三橋達也のような、欲望にとりつかれた人間を描く際のクールなタッチに特徴があるといったところか。司葉子がストッキングをはくシーンにはどきどきさせられた。