明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

新作映画批評

アピチャッポン・ウィーラセタクン『メコンホテル』

アピチャッポン・ウィーラセタクン『メコンホテル』★★ アピチャッポン・ウィーラセタクンは映画作品を発表する一方で、映像を用いたインスタレーション作品を中心にした美術の個展をたびたび開いてきた。それらのインスタレーション作品は、彼が撮ろうとして…

ウジェーヌ・グリーン『La Sapienza』についての覚書

ウジェーヌ・グリーン『La Sapienza』(2014) ★★½ ただの覚書。 ほとんど棒読みのような抑揚のない台詞回し(アルティキュラション、書き言葉的なリエゾン)、カメラに真正面向いて話す俳優たち、そのミニマムな演技。似て非なるものだとあらかじめ断った上で…

ショーン・ベイカー『タンジェリン』――iPhone を使って撮られたバーレスク・コメディ

しばらくまともに更新していなかったので、その埋め合わせに、年末からずっとハイペースで更新を続けていたのだが、そろそろペースダウンしようと思う。書くネタならいくらでもあるが、あんまり急いで更新していると、書く内容が散漫になってくる。それに、…

『クローバーフィールド』

『クローバーフィールド』この映画は、最初から最後まで、一般人がビデオで撮影した映像という体裁でつくられている。いわば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の手法を使って作りあげられた大仕掛けのSFアクションである。ドゥルーズふうにいうなら、…

猟師と庭師〜パスカル・フェランの『レディ・チャタレー』覚書

『消去』において、トーマス・ベルンハルトは、猟師と庭師を、異なる世界に属する二つの存在として、何度も繰り返し対比して語り、猟師のほうをあからさまにナチズムと結びつけて考えている。さらには、『野獣たちのバラード』というかなり大胆な邦題をつけ…

大日本人だよ

バスに乗った松本に、キャメラの背後に隠れたインタビュアーが語りかける。インタビュアーの姿は、ときおりガラスに映りこむ場合をのぞいて、画面に現れることはない。シネマ・ヴェリテふうの擬似ドキュメンタリー。映画はまずはそんなふうにはじまる。出だ…

『マジシャンズ』

ソン・イルゴン『マジシャンズ』★☆全編がワンショットで撮り上げられていることで話題になった作品。『エルミタージュ幻想』ですでに試みられている技法であるが、映画を最初から最後までカットなしに撮り切るというのは、映画を撮る側だけではなく、映画を…

ラウール・ルイス『クリムト』

ラウール・ルイス『クリムト』★★☆ 芸術家ものというのはどうも苦手だ。たいていは退屈で見ていられない。しかし、映画がわからない人間に限ってこういうものが好きだったりする。ギャングが主人公だと見向きもしないのに、画家や作家が主人公というだけで、…

西川美和『ゆれる』

西川美和『ゆれる』★★☆サスペンスという言葉の原義が「宙づり」であるとするならば、渓谷にかかった不安定な吊り橋のなかほどで起きた事件の真相を、文字通り宙づりにすることで物語を成立させているこの映画は、サスペンスという言葉の意味にこの上なく忠実…

チャン・ユアン『緑茶』〜一人二役につての覚書

また『となりのトトロ』を見てしまった。テレビで放映されるとついつい見てしまう。宮崎駿のアニメではわたしはいまだにこれがいちばん好きだ。リアリスティックな部分とファンタスティックな部分のバランスがいちばんいいように思えるし、説教くさくないの…

テロリストたちは「ルナ」にいる、とベルナルドはいう〜マルコ・ベロッキオ『夜よ、こんにちは』

マルコ・ベロッキオ『夜よ、こんにちは』★★★テロの嵐が吹き荒れ、「鉛の時代」と呼ばれた70年代のイタリア。この時代の記憶は、今もイタリア人の記憶に深く刻み込まれている(たとえば、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』には、この時代が深く影を落として…

アレクサンドル・ロゴシュキン『ククーシュカ』

アレクサンドル・ロゴシュキン『ククーシュカ』(2002)★★ラップランドの存在を初めて知ったのは、たしか大島弓子のなにかのマンガのなかでだった。少女マンガの主人公が夢見る不思議の国。どこか遠い遠いところにある夢の国。マンガのなかにだけ存在する場…

ソクーロフ『ファザー、サン』

アレクサンドル・ソクーロフ『ファザー、サン』★★チラシにはソクーロフの最高傑作と書いてある。客の入りがそれほど見込めないミニシアター系の作品の宣伝には、最新作のたびに「最高傑作」という文句が使われるので、今更こういう文句を信じていたわけでは…

絵画は映画に撮られるために存在する〜『ダ・ヴィンチ・コード』雑感

『ダ・ヴィンチ・コード』★★『ダ・ヴィンチ・コード』は、カンヌ映画祭で上映されたときのあまりの評判の悪さをフランスのメディアを通して聞いていたので、それほど期待していなかったが、さすがはロン・ハワード作品だけあってそれなりに楽しめる作品にな…

ジム・ジャームッシュ『ブロークン・フラワーズ』

「共謀罪」、不気味です。 「ジョジョの奇妙な冒険」、読み始めました。 ▽ジム・ジャームッシュ『ブロークン・フラワーズ』最近、ロードショーが充実している。『ブロークバック・マウンテン』も、『アメリカ、家族がいる風景』も、『ヒストリー・オブ・バイ…

クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』

テレンス・マリックほどではないが、最近妙に寡作になっているクローネンバーグの、前評判の高かった新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を見に行く。最近は、封切り作品は上映終了ぎりぎりになって見に行くことが多い。封切られた週に映画を見に行くの…

ヴィム・ヴェンダース『アメリカ,家族のいる風景』

大阪上映時に見逃していたので、京都シネマに見に行く。『ランド・オブ・プレンティ』は前評判が高かったのでちょっと期待しすぎていたせいか、あまり乗れなかったけれど、これは悪くない。巨大な二つの目のような模様が、画面が明るくなって、巨大な岩場の…

エイアル・シヴァン、ミシェル・クレイフィ『ルート181』

1月末に、京都の「ひと・まち交流館」という場所に映画『ルート181』を見にいく。『スペシャリスト:自覚なき殺戮者』のエイアル・シヴァンと『ガリレアの婚礼』のミシェル・クレイフィが共同で撮ったドキュメンタリーだ。最近は劇場に映画を見にいくこ…

ホン・サンス『女は男の未来だ』

ホン・サンスの『女は男の未来だ』を見るため久しぶりに動物園前シネフェスタにいく。地下鉄の動物園前で降り、劇場に一番近い5番改札口をでるとき、いつもローマのチネチッタのことを思い出してしまう。むかしいったチネチッタの地下鉄の駅がわたしの記憶…